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バイデン米政権、薬価引き下げ交渉により10種類の医薬品価格の大幅引き下げを実現と発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月16日 11時50分

米国のバイデン政権は8月15日、薬価引き下げ交渉の対象となっていた10種類の医薬品について、全ての交渉参加メーカーと合意に達したと発表した。薬価引き下げ交渉はインフレ削減法(IRA)に基づき実施されているもので、2023年8月に第1弾の対象となる医薬品を選定(2023年8月31日記事参照)、同年10月に製薬会社10社が交渉開始に合意(2023年10月4日記事参照)するとともに、2024年9月1日までに交渉結果を発表することを目標として交渉が進められていた。

ホワイトハウスの発表によると、対象となった医薬品の薬価は38~79%引き下げられ、2026年に発効する引き下げにより、メディケア加入者の自己負担額を計15億ドル節約できると推計している。また、バイデン政権は今後も毎年薬価引き下げ交渉の対象を増やしていく方針で、2025年は最大15種類を対象として選定する見込み。

バイデン政権は、2025年度予算教書で生活者のコスト削減を重視し、中でも薬価引き下げを目玉政策の1つとして扱ってきた(2024年3月18日記事参照)。本交渉を巡っては、複数の製薬会社から訴訟が提起されるなど業界の強い反発が示されてきたが、こうした大企業の反発を乗り越えるかたちで交渉妥結にこぎ着けたことは、政権にとって大きな政治的成果といえそうだ。8月19日から始まる民主党全国大会などでも、今回の成果を強調していく可能性が高く、特に恩恵を受けることになる高齢者層への訴求効果が期待される。

もっとも、今回の引き下げ幅ほどには国民負担の軽減にはつながらないとの指摘もある。今回対象となった10種類の医薬品はいずれもメディケア・パートD(高齢者向け処方薬保険)の対象となっており、現行でも製薬会社からメディケアに対して一定のリベートが支払われ、メディケアはこれを加味し値引きをした上で加入者に医薬品を提供している。しかし、リベートの額は公表されておらず、仮に薬価引き下げが実現したとしても、リベートの額も減少する場合には、加入者が実際に支払う正味の価格はさほど引き下がらないこともあり得る。AARP公共政策研究所で処方箋薬に係る政策を担当するリー・パービス氏は「人々が求めているのは、交渉後の価格がこれまでの正味価格よりも安くなることだ。リベートが機密事項であることを踏まえると、それは難しい質問だ」と述べている(CNBC8月15日)。また、米国研究製薬工業協会のスティーブ・ユーブル会長も「政権は(IRAの)価格設定スキームを利用して政治的な見出しを盛り上げているが、患者はそれが自分たちにとって何を意味するかを知ったらがっかりするだろう。患者の自己負担が減るという保証はない」と述べ、同様に効果を疑問視している(政治専門紙「ポリティコ」8月15日)。

(加藤翔一)

(米国)

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