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米商工会議所、USTRのデジタル貿易ルール形成はウォレン上院議員と連携との調査結果発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月6日 11時40分

米国商工会議所は6月4日、米通商代表部(USTR)がデジタル貿易などのルール形成の意思決定で、エリザベス・ウォレン上院議員(民主党、マサチューセッツ州)事務所と緊密に連携しているとする調査結果を発表した。

米商工会議所は2023年12月、情報自由法(FOIA)に基づき、USTRに対して5つの情報公開請求を行った。USTRはこれに対して2024年1月、USTRへの訪問者記録と特定の業界団体との連絡記録に関する情報提供を行った。米商工会議所はこの提出を受け、USTRがインド太平洋経済枠組み(IPEF)やWTOの共同声明イニシアチブ(JSI)会合でデジタル貿易ルールへの支持を撤回したのは、ウォレン議員と関係の深い一部の業界団体の主張に影響を受けていると発表した(2024年2月6日記事参照)。USTRはその後4月に、米連邦取引委員会(FTC)、司法省反トラスト局との連絡記録を提出し、5月にUSTR職員とウォレン議員の事務所との連絡記録を提出した。

米商工会議所は今回の発表で、次の点が明らかになったとしている(注)。

USTRはウォレン議員事務所と緊密な協力関係を維持している。
公式発表の前に、ウォレン議員事務所に事前通告を行ったUSTRのメールが多数存在する。
2023年10月のJSI会合でのUSTRによるデジタル貿易ルールへの支持撤回について、ウォレン議員事務所は2023年8月末の段階で知ることができたとみられる。
メディアへの働きかけ、超党派の議会からの反発の管理、支持撤回を擁護するウォレン議員によるジョー・バイデン大統領宛て書簡のUSTRによる編集依頼など、デジタル貿易ルールへの支持撤回の影響を管理するための活動で、USTRはウォレン議員事務所と緊密に連携していた。

これらより米商工会議所は、USTRはデジタル貿易ルールなどに影響を与える重要な決定に偏ったアプローチを行っており、ウォレン議員事務所との緊密な連携は透明性と影響力について重大な問題を提起していると結論付けた。一方で、米通商専門誌「インサイドUSトレード」(6月5日)によると、USTRの広報担当者は今回の発表に対し、米商工会議所は偏見を持っていると非難した。また、ウォレン議員側は、ビッグテックと米商工会議所のようなロビイストは企業の独占を守るために消費者、労働者、中小企業を犠牲にして通商政策を武器化してきたと非難した上で、「ビッグテックとそのロビイストによる貿易ルールの不正操作の企てに反対し続ける」と述べている。

USTRのキャサリン・タイ代表は今回の商工会議所の発表の前日、首都ワシントンのシンクタンクが主催したイベントで、デジタル貿易ルールに関するルールは米国内でルール化した後に貿易相手国と議論すべきとして、慎重な姿勢を示している(2024年6月5日記事参照)。11月に大統領選挙を控える中、共和党の大統領候補者指名を確実にしているドナルド・トランプ前大統領の陣営は、デジタル貿易ルールに対して明確な主張は行っていない。議会動向などに詳しい首都ワシントンの専門家によると、トランプ政権下で発効された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のデジタル貿易章が1つの指針になり得ると指摘している。ただし、いずれにせよ、デジタル貿易ルールを巡る米国内で意見の隔たりは大きく、収束のめどはたっていない。

(注)米商工会議所は、デジタル貿易に関することのほか、ウォレン議員事務所が農業問題や、21世紀の貿易に関する台湾・米国イニシアチブ交渉(2024年5月8日記事参照)、IPEFのデジタル条項、米ケニア戦略的貿易・投資パートナーシップ(2024年5月22日記事参照)、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」(2024年6月3日記事参照)、通商諮問委員会の構成、カナダのデジタルサービス税(2024年4月5日記事参照)などのほか、投資家対国家の紛争解決(ISDS)に関する米国のコミットメントの後退についても関心を示したとしている。

(赤平大寿)

(米国)

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