企業復興税優遇法の改正法(CREATE MORE法)が成立(フィリピン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月12日 14時30分
フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は11月11日、法人税引き下げや優遇税制を定めた企業復興税優遇法(通称:CREATE法、共和国法第11534号)を改正する「CREATE MORE法(共和国法第12066号、注1)」に署名し、同法は成立した。
今回の法改正に当たっては、2021年4月のCREATE法発効から3年半が経過し(2022年2月18日付地域・分析レポート参照)し、この間にCREATE法と施行規則の矛盾や曖昧さから、付加価値税(VAT)インセンティブの適用範囲などを巡って、度重なる施行規則の改正や明確化に関する通達の発布があり、国内外企業の投資活動に大きな混乱を招いていた。また、他のASEAN諸国と比べても法人税率が高いことから、さらなる投資促進の観点で同法の見直しが求められていた。ジェトロの「2023年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、フィリピン進出日系企業の投資環境上の最大のリスクとして「税制・税務手続きの煩雑さ」が挙げられた。
CREATE MORE法では、主に次のような改正が行われた。
追加控除制度を選択する登録法人への法人税率の引き下げと控除対象項目の見直し(注2)
物品やサービスにかかるVATの適用範囲の明確化
所得税優遇措置利用期間(注3)と簡素化された経過措置の明確化
VAT還付制度の合理化
マルコス大統領はCREATE MORE法署名時のスピーチで、VAT還付制度について「明確な還付までの過程と期限を設定することや、コンプライアンス要件を法律で義務付けているものに限定することで、透明性と予測可能性を高める。これらによって、投資家とパートナーの両方が自信を持てる信頼性の高いプロセスを構築する」と述べた。
また、フレデリック・ゴー投資・経済担当大統領補佐官は、CREATE MORE法の成立が多くの外国投資家から関心を集めるきっかけになるとし、関心を寄せている国として韓国や中国、日本、オーストラリア、米国を挙げた。さらに、同法の成立が米国のドナルド・トランプ次期政権に対し、フィリピンへの投資をさらに促す良い手段になるとの自信をのぞかせた(11月11日付「GMAニュース・オンライン」)。
(注1)CREATE MORE法は、「the Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises to Maximize Opportunities for Reinvigorating the Economy(経済再活性化のための機会最大化を目指す企業復興税優遇措置)」の略。
(注2)追加控除制度を選択する登録事業法人への法人税率は、25%から20%に引き下げられた。控除対象項目の見直しの例として、製造部門のコスト削減のために電力費用の100%が追加控除の対象となったことなどが挙げられる。
(注3)所得税優遇措置の利用期間は、最大17年間から27年間と10年間延長された。
(中村和生)
(フィリピン)
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