米東海岸の港湾労使交渉、バイデン政権の介入は現段階で見込めず(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月19日 11時0分
米国東海岸の労使交渉を巡り、国際港湾労働者協会(ILA、注)は9月17日、米国海運連合(USMX)と新たな労働協約を締結できなければ、「業務を停止する用意がある」とあらためて警告する声明を発表した。現行の労働協約は9月30日に失効予定で、両者が正式交渉に至らなければ、ILAの組合員は10月1日にストライキを起こす可能性が高まった。
両者の間で難航している労使交渉は、2024年6月から基本協約交渉を開始する予定だったが、ILA側は、組合員の労働力を使わずに、港湾ターミナルでトラックを処理するために自動化技術が導入されたことが現行の労働契約に違反していると主張し、労使交渉が中断していた。その後、労働協約の締結に向けて協議を行うため、9月4~5日に会合が開かれたが、賃金などの問題で対立し、交渉は中断している(2024年9月9日記事参照)。
USMX側は声明(9月17日)で、「われわれはILAとその加盟組合に多大な敬意を抱いているが、ILAの要求がすべて満たされない限り対話の再開に応じないという事態に至ったことは残念でならない」「この行き詰まりを解決する唯一の方法は交渉を再開することであり、われわれはいつでも交渉を再開する準備ができている」との意向を示した。
実際にストライキが実施された場合、約4万5,000人の労働者と36カ所の港湾が影響を受け、サプライチェーンに重大な影響を及ぼす可能性がある。小売業者や製造業者を代表する業界団体は、労使交渉の再開に向けてこれまでにも政府が関与する必要性を指摘してきた(2024年9月9日記事参照)。
米国では、国家の安全保障や安全を脅かす労働争議に、大統領が介入する権限を持つ。1947年に制定された連邦法「タフト・ハートレー法」に基づき、連邦政府が仲介して団体交渉を調停する代わりに、交渉に要する80日間は労働者に職場への復帰を強制することができる。ただし、バイデン政権高官は「ストライキを防止するためにタフト・ハートレー法を発動したことはなく、現在もそうすることは考えていない」「両者が交渉の場に戻り、誠意を持って交渉に臨むよう、すべての関係者に呼びかける」と表明している(ロイター9月17日)。
HSBCグローバル・リサーチは、ストライキが発生した場合、米国の輸入品の50%以上、世界の船舶の15%以上に影響を与える可能性があると警告した。同社は、欧州や中南米からの輸入が停止する可能性がある一方で、アジアからの輸入が米国西海岸の港湾を逼迫させる可能性がある(業界専門誌「Gキャプテン」9月18日)との注意を促しており、労使交渉の行方に注目が集まっている。
(注)USMXは米国東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働の雇用主を、ILAは同労働者を代表する。
(樫葉さくら)
(米国)
この記事に関連するニュース
-
米港湾ストの可能性、農業団体などが政府に介入要請
ロイター / 2024年9月26日 9時6分
-
米東海岸の港湾スト、実施されれば直ちに供給網混乱も=仏海運大手幹部
ロイター / 2024年9月19日 12時27分
-
米主要港、7月小売業者向け輸入コンテナ量は前月比8.1%増、東海岸の港湾スト懸念で輸入増続く(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月12日 15時15分
-
米東海岸とメキシコ湾岸の港湾労組が会合、ストライキの可能性高まる(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月9日 11時55分
-
カナダの鉄道会社2社、業務復帰命令を受け業務再開、労働組合は上訴(カナダ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月6日 0時0分
ランキング
-
1中国大使「深圳の事件、冷静に対処する」 都内で中国建国75年レセプション
産経ニュース / 2024年9月26日 19時23分
-
2中国、海自艦の台湾海峡通過めぐり「政治的な意図を警戒」 中国外務省報道官が表明
産経ニュース / 2024年9月26日 17時36分
-
3香港ネットメディア前編集長に禁錮1年9月…報道を「扇動」と判断、香港返還後で初
読売新聞 / 2024年9月26日 23時45分
-
4ウクライナに1兆円超支援 米、来月独で首脳会合主催
共同通信 / 2024年9月26日 22時47分
-
5イスラエル、レバノン市民に電話で退避警告 国営通信社
AFPBB News / 2024年9月23日 18時31分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください