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イエレン米財務長官、米国の対中政策に賛同する国が増加と主張、トランプ関税は牽制(米国、中国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月23日 0時45分

米国のジャネット・イエレン財務長官は10月17日、米国のシンクタンク外交問題評議会(CFR)が主催したイベントで基調講演を行った。

財務省の発表によると、イエレン長官は冒頭、貿易によって国民が多くの製品を低価格で入手できることや、1割以上の雇用が外国投資に起因していることなど、貿易投資がもたらす米国経済への恩恵を紹介した。ただし、過度に集中したサプライチェーンにはリスクがあるとし、多様化するための戦略的な国際関与が必要だと述べた。具体的な対応策には、「底辺への競争」を防ぐためのグローバル・ミニマム課税導入の取り組み、日本などとの「鉱物安全保障パートナーシップ」(2023年3月29日記事参照)やインド太平洋経済枠組み(IPEF)でのサプライチェーン協定(2024年9月17日記事参照)の締結、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)を通じたグローバルな半導体エコシステムの多様化(2024年10月21日記事参照)などを例示した。また、気候変動や紛争のような国境を越えた課題は、米国の輸出市場の低迷などにつながるとして「関与する以外に選択肢はない」と述べ、世界中の国々が課題に取り組むよう支援すべきとの立場を鮮明にした。

中国との貿易投資については、米国企業と労働者に多大な利益をもたらし維持されなければならないとする一方で、不公正な貿易慣行や過剰生産などは問題視した。その上で、米国内の製造業の強化だけでは不十分とし、1974年通商法301条に基づく対中追加関税率の引き上げ(2024年9月17日記事参照)などの対抗措置の重要性を強調した。また、EUや新興国が米国と同様に対応しているとし(注1)、同盟国を中心に米国の対中政策に賛同する国が増えているとの認識を示した上で、「国際的なコンセンサスの高まりは、中国に対して、その慣行を転換しなければならないとの強い意思表示になる」と述べた。

講演の最後には、米国の経済的繁栄は世界の経済状況に依存しているとして、米国が孤立主義に走れば苦境に立たされると述べた。イエレン長官は冒頭でも、「友人や競争相手に同様に高い関税を課したり、最も親しい同盟国でさえも取引相手として扱ったりすることで米国を孤立させる主張は、大きな誤りだ」と述べ、共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領が主張するベースライン関税やトランプ互恵通商法を暗に牽制した(注2)。

なお、ダリープ・シン大統領副補佐官(国家安全保障担当)も10月17日、米国製造業連合(AAM)が行ったイベントで、米国と見解を同じくする政府が増加し、中国が抱える過剰生産能力が重要な産業に脅威をもたらしていると公言するようになっていると述べ、イエレン長官と同様の認識を示した。

(注1)米国はEUやカナダによる対中関税率の引き上げを歓迎するコメントを発表している(2024年9月2日記事2024年10月9日記事参照)。

(注2)ベースライン関税は全ての輸入品に対して一律10~20%の関税率を課すこと、トランプ互恵通商法は米国へ輸出する国がある製品に対して課している関税率と同じ関税率を、米国輸入時にも課す法案(2024年8月9日付地域・分析レポート参照)。民主党と共和党の政策方針の違いについては、2024年9月6日付地域・分析レポート参照

(赤平大寿)

(米国、中国)

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