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電子インボイスの行方、中小企業はコスト負担とリソース不足を懸念(マレーシア)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月26日 0時5分

マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)は11月15日、電子インボイスの導入状況に関するアンケート調査(実施期間2024年9月13~29日、有効回答数114社、回答率18.4%)の結果を会員向けに公開した。

マレーシア政府は2024年から電子インボイス制度を段階的に導入し(2024年5月29日記事参照)、まず(1)売上高1億リンギ(約34億円、1リンギ=約34円)超の企業に2024年8月1日の導入を義務付けた。この後、(2)同2,500万~1億リンギの企業が2025年1月1日、(3)2,500万リンギ未満の企業が同年7月1日に、それぞれ導入を求められるが、既に自主的に参画している(2)(3)の企業も存在する。

内国歳入庁(IRB)が詳細な実務マニュアルやシステム関連の情報を発表したのが導入直前だったこともあり、日本企業の対応状況や課題を把握するのが調査の狙い。対象企業のうち、(1)は41.2%、(2)が31.6%、(3)が24.6%だった。導入方法(予定を含む)については、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)によるシステム連携が36.0%と最多で、次いでミドルウエアの活用が27.0%、IRBのマイ・インボイス・ポータルを使った直接認証が16.2%で続いた(注)。

2025年の本格導入に向け、コストやIT人材などのリソースを憂慮

既に導入済みの(1)に対して課題を尋ねたところ、最多52.2%の企業が「現時点で課題、問題点はない」と回答し、次の「IRBとつなぐシステム統合が難しい」(23.9%)との差が大きかった。(1)の企業は規模も大きく、相応の社内リソースや資金力もあるため、一定の対応が可能で、トラブルも比較的少なかったとみられる。

他方、今後の導入開始に向けた準備上の課題については、「制度やシステムの詳細情報が入手しにくい」が64.9%と圧倒的で、次いで「コスト負担」(58.6%)、「準備期間が短い」(40.5%)、「従業員の研修やマニュアル改定が難しい」(25.2%)と続いた。個別意見として、「コスト負担により、中小企業にまで制度が浸透するのか疑問」「政府は導入時期を決めるのみで、具体的な条件を開示するのが遅い」「IRBが度々APIを更新するので、都度内部システムの改修が必要」などがあった。

なお、11月19日時点で電子インボイスを導入した企業は7,900社、請求書発行件数は8,700万件に上る。リム・フイイン財務副大臣が11月20日の国会答弁で明らかにした。リム氏は、システム導入にかかる費用は3,000~3万リンギとの財務省推計を提示した一方、導入開始から6カ月の移行期間中は、複数の取引を1つにまとめた一括請求書の発行を認めるなど、運用に柔軟性を持たせていると強調した。制度導入にかかる設備投資への減税を次年度予算案で拡充したとも付言した(2024年10月25日記事参照)。

(注)

APIによるシステム連携:企業が使用する既存の請求書発行システムと税務当局のシステムをAPIによって連携させる方法。請求書の発行と認証が自動化される。
ミドルウエアの活用:ミドルウエアを用いて、上記両システムを接続する方法。異なるシステム間のデータ交換を容易にする。
マイ・インボイス・ポータルを使った直接認証:当局のシステムを無料で利用。取引件数の少ない企業に適している。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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