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米調査会社、2025年10大リスク発表、日本のリスクは関税と米・メキシコ関係悪化(米国、日本、メキシコ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月8日 11時30分

添付資料PDFファイル(77 KB)

米国の調査会社ユーラシア・グループは1月7日、2025年の「世界の10大リスク」を発表した。1位は「深まるGゼロ世界の混迷」、2位は「トランプの支配」、3位は「米中決裂」だった(添付資料表参照)。

同社は「Gゼロ」について、「グローバルな課題への対応を主導し、国際秩序を維持する意思・能力を持つ国家や国家の集まりが存在しない状態」と定義する。1位に挙げた「深まるGゼロ世界の混迷」の中で、リーダーシップの空白によって世界秩序は崩壊しつつあり、「1930年代や冷戦初期に匹敵する世界史上でも独特の危険な時代に突入しつつある」と警鐘を鳴らした。こうした状況を打開するために、米国は十分な力を有しているが、ドナルド・トランプ次期大統領が「アメリカ・ファースト」の政策を提唱していることから、米国自身が「リーダーシップを取ることを望んでいない」と指摘した。

2位の「トランプの支配」では、トランプ氏が既に政権運営の経験があることや、共和党が上下院で多数党となっていること、最高裁判所で保守派判事が多数を占めていることなどから、トランプ政権の2期目は自身の政策を推進しやすい立場にあるとした。その上で、トランプ氏が政治的に近い企業を規制などの面で優遇すれば、「市場競争ではなく、権力への近さが成功を左右するシステムが生まれる」とし、企業は「トランプ政権との関係構築に時間と費用を費やさざるを得なくなる」と指摘した。ただし、下院で共和党と民主党の議席数が僅差なことや、2026年中間選挙で民主党が下院を奪還するとの予想が出ていることなどから(注1)、トランプ氏の任期後半での政策の実現可能性は制限されるとも指摘している(注2)。

3位の「米中決裂」では、「管理されないデカップリング」が生じると指摘した。関税政策を中心とした通商政策が主因になるとし、米国の一部の品目に対する対中関税率は50~60%か、それ以上に引き上げられ、2025年末までに中国からの全ての輸入品に対する関税率の平均は25%前後になると予測した。輸出管理では、中国企業のエンティティー・リスト(EL)への追加、輸出許可取得の厳格化、バイオテクノロジーなどへの規制拡大、域外適用の拡大、先端半導体の輸出規制の継続などが行われるとした。

ユーラシア・グループは、10大リスクが日本に与える影響も発表している。日本に対しては、世界の10大リスクで4位に挙げられた「トランプノミクス」が最大のリスクだとした。トランプ氏は貿易赤字を問題視していることから、日本も関税措置の対象になり得るとした上で(注3)、日本の対米輸出額が最も大きい自動車に関税が課される可能性が高いと指摘した。そのほか、10位の「米国とメキシコの対立」も日本にとってのリスクと指摘した。日本の自動車メーカーは米国市場に向けた生産拠点としてメキシコを活用していることから、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の2026年の見直しで、関税引き上げや原産地規則の厳格化が行われれば(注4)、日本の自動車メーカーとサプライヤーに直接的な影響を与えると指摘している。

(注1)第119議会下院は、共和党が219議席、民主党が215議席、欠員1議席と両党の議席数は僅差で始まった。1月20日には政権入りする下院議員が辞職するため、議席数の差はより縮まることになる(2025年1月7日記事参照)。

(注2)例えば、バイデン政権下では、インフラ投資雇用法(IIJA)や、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)、インフレ削減法(IRA)といった主要な経済政策は全て、上下両院ともに民主党が多数党だった2022年11月の中間選挙前に成立している。

(注3)トランプ次期政権下で取られ得る関税政策については、2024年12月10日付地域・分析レポート参照

(注4)USMCAの見直しで完成車の原産地規則厳格化の論点は、2024年12月12日付地域・分析レポート参照

(赤平大寿)

(米国、日本、メキシコ)

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