欧州委、加盟国の過半に再エネ許認可の迅速化とCSRDに関する法整備の遅れ指摘(EU)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月2日 0時15分
欧州委員会は9月26日、再生可能エネルギー(再エネ)指令改正法(2023年9月20日記事参照)と、企業持続可能性報告指令(CSRD、注1)に関し、国内法化の期限が過ぎたものの、大多数の加盟国で国内法化の手続きが完了していないとして、加盟国に速やかな対応を求めた(プレスリリース)。
まず、再エネ指令改正法に関しては、一部規定の国内法化の期限が7月1日だったが、期限内に完了したのはデンマークのみ。残りの26加盟国では国内法化が済んでいない。今回期限を迎えた規定は、再エネ整備に関する許認可手続きの迅速化に関するもので、このままでは再エネ整備の遅れにつながりかねない。数年単位の時間を要する許認可手続きは、EUの産業競争力の強化に関する報告書(2024年9月19日記事参照)で、エネルギー価格のより長期的な高止まりにつながるとして、迅速化の重要性を指摘したばかりだ。
また、CSRDに関しては、国内法化の期限は7月6日だったが、17加盟国(注2)で国内法化が完了していない。一部企業については、2024年会計年度分を対象に、2025年からCSRDに基づく新たな報告義務が課されることになっている。国内法化が全加盟国で早期に完了しない場合、EU全域でのCSRDの一貫した実施は難しいとみられる。
欧州委は、2019年に発足したウルズラ・フォン・デア・ライエン体制下で、環境・エネルギー(2024年6月6日記事参照)や、サプライチェーンと人権に関する多くの規制を提案。2024年夏までにそのほとんどを成立させた。フォン・デア・ライエン委員長は、2024年末にも発足するとみられる2期目に、新規制の実施に注力するとしている(2024年7月19日記事参照)。しかし、今回の発表のとおり、新規制のうち適用する上で加盟国による国内法化が必要となる「指令」の一部で国内法化が遅れていることから、今後の実施に少なからず影響が出そうだ。
(注1)詳細はジェトロの調査レポート「CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス」(2024年5月)を参照。
(注2)ベルギー、チェコ、ドイツ、エストニア、ギリシャ、スペイン、キプロス、ラトビア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、フィンランド。
(吉沼啓介)
(EU)
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