ルーマニア大統領選、ロシア介入やSNS不正操作で憲法裁判所が無効判断(ルーマニア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月10日 2時15分
ルーマニア憲法裁判所は12月6日、11月24日に実施された大統領選挙を無効とする判断を示した。選挙はやり直しとなり、新たな日程が政府から発表される予定だ。大統領選では、無名だった極右で親ロシア派のカリン・ジョルジェスク氏が最多の得票数となり、予想外の結果に衝撃が広がっていた(2024年11月26日記事参照)。
同裁判所の判例報告によると、選挙では候補者間の機会均等をゆがめる行為として、テクノロジーによる不正操作や、未申告の資金源からの選挙運動資金の提供、プロパガンダや偽の情報を認めた。SNSプラットフォームのアルゴリズムを利用して特定の候補者の露出が増えると、他の候補者の露出が減るような操作も確認され、明らかな不平等もみられた。さらに、選挙資金の申告で候補者の1人が「支出ゼロ」と記載したものの、内務省のデータから判明したキャンペーン規模と一致せず、選挙資金の調達で透明性の原則に反するものだとした。
選挙無効の決定を受け、現職大統領のクラウス・ヨハニス氏は12月6日の判決後の午後7時に演説を行った。ルーマニアは安定した堅実な国家であり、親EUかつNATOの強固な同盟国であり続けると強調した。同氏はまた、諜報(ちょうほう)機関の情報により、国外からの違法な選挙キャンペーンが確認されたことから、国家安全保障上の問題として、11月28日に国防最高評議会の緊急会議を招集したと説明した。
国防最高評議会が公表した諜報機関による機密文書(12月2日付、12月4日付)では、大統領選へのロシアの介入が指摘された。NATOや米軍の基地を擁し、モルドバを巡る直接の競合相手のルーマニアをロシアは敵国(非友好国)と認識し、プロパガンダと偽の情報によって欧州懐疑派の候補者を支援し、反体制運動をあおることで、ウクライナ支持を低下させたり、ルーマニアの社会的不満を拡大させたりする目的があるとした。加えて、選挙管理システムへの8万5,000件以上のサイバー攻撃も確認された。
新たな選挙日程は、12月1日の議会選挙(2024年12月4日記事参照)を受けて発足する新政権の下で決定される。
(高崎早和香)
(ルーマニア)
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