米商務省、AD・CVD執行強化の最終規則公表、農業補助金の例外規定を廃止(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月23日 13時20分
米国商務省国際貿易局(ITA)は12月19日、アンチダンピング関税(AD)と補助金相殺関税(CVD)の執行を強化する最終規則を発表した。12月16日付の官報で公示した。最終規則は2025年1月15日に発効する。
ADとCVDは、公正な競争関係を取り戻すことを目的とした貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で賦課される。CVDは、政府補助金を受けて生産などされた貨物の輸出が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。いずれも、米国も加盟するWTO協定で認められている措置だが、具体的な手続きは各加盟国の国内法で定められる。米国の場合は1930年関税法が根拠法となっており、今回の最終規則も同法に基づく。最終規則の策定に向け、ITAは2024年7月に規則案を発表し、パブリックコメントを募集していた。
今回、最終規則で示した変更点は、用語の修正など軽微なものから、既存の措置の明文化や、一部の例外規定の撤廃など、合計30点と多岐に及ぶ。このうち、AD・CVDの発動や税率算定の判断に影響すると見込まれるものでは、農業補助金をCVDの対象外とする例外規定〔連邦規則集(CFR)第19章351.502条(e)〕の削除がある。官報では、農業補助金の例外規定の廃止について、パブリックコメントを通じて「一般的に、農業補助金は各国政府の正当な政策(注)とみなされ、CVDの対象となるべきではない」「(農業補助金の)例外規定を撤廃することは、米国の貿易相手国に対して誤ったシグナルを送ることになる」など、規則改定への反対意見を受け取ったとした。だが、商務省は官報で「(農業補助金の例外規定の撤廃は)米国の政策変更と解釈すべきではない」「引き続き個別案件ごとに判断される」などと、撤廃の正当性を強調した。ただし、米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(12月13日)は貿易分野に詳しい弁護士の話として、「規則の改定により、農産品の輸入品に対するCVD調査の門戸が開かれる可能性がある」などと指摘している。
(注)農業分野は一般的に、小規模生産者が多いほか、自然条件に収穫量が左右されることなどから、各国政府が保護的な産業政策を実施しており、不公正貿易慣行の文脈では国際的に例外視される。
(葛西泰介)
(米国)
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