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米連邦控訴裁、テキサス州不法移民対策のメキシコ国境沿いの浮き壁の存続認める(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月7日 0時30分

米国の第5巡回区連邦控訴裁判所は7月30日、テキサス州(注1)が不法移民対策としてメキシコとの国境沿いに設置した「浮き壁」を巡って、地方裁判所の一時差し止め命令を覆し、浮き壁の存続を認めた。

テキサス州は不法移民の越境抑止策の1つとして2023年7月、同州イーグルパスの国境沿いを流れるリオグランデ川に、数珠つながりの大型ブイからなる浮き壁を設置した。長さは1,000フィート(約305メートル)に及ぶ。米国政府はこれを違法として訴訟を提起し、2023年9月に地方裁判所が一時差し止め命令で、浮き壁を河岸へ移動するよう命じた。同州の控訴に対し、浮き壁の移動命令は退けたものの、差し止め命令は続いていた。

同州のグレッグ・アボット知事(共和党)は今回の決定を歓迎しつつ、「この闘いは、終わりには程遠い。当州は引き続き国家と州の安全を守るため、国境防衛という憲法上の権利を守っていく」と述べた。

アボット知事は2021年3月から「オペレーション・ローン・スター」と呼ばれる州独自の不法移民対策を実施している。2024年7月までに51万6,300人の不法移民を拘束し、4万5,300人を逮捕した。また、5億500万回服用分の合成麻薬フェンタニルを押収した。テキサス州は、ニューヨークやシカゴ、首都ワシントンなどの「サンクチュアリシティー(聖域都市)」と呼ばれる不法移民保護に寛容とされる都市に向けて、バスや飛行機を用いて不法移民を移送。その数は2022年4月~2024年7月で約12万人に上る。

同州は2023年10月、不法移民の立ち入りを防ぐため、リオグランデ川沿いにカミソリ有刺鉄線を設置。連邦の国境警備員がこれを切断したのを受けて、州政府は州の資産を損壊したとして連邦政府を訴えた(注2)。

アボット知事はドナルド・トランプ前大統領が共和党大統領候補の指名受託演説を行った7月の共和党全国大会(2024年7月22日記事参照)に登壇し、バイデン政権下で不法移民数が激増したことに言及して、テキサス州が取る国境防衛策が妨害されていると批判。「バイデン大統領は有刺鉄線の切断を命じたが、私は州兵にこれを3倍にするよう命じた」として、対決姿勢を強調した。

(注1)約3,145キロに及ぶ米国とメキシコの国境のうち、テキサス州が面するのは64%超の約2,018キロ。

(注2)連邦最高裁判所は2024年1月、連邦の国境警備員が鉄線を撤去することを認めた(2024年1月24日記事参照)。

(キリアン知佳)

(米国)

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