米大統領選結果の要点と日米関係の展望、米シンクタンクの専門家に聞く(米国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月7日 13時45分
米国大統領選挙の投開票が11月5日に行われ、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に勝利することが確実となった(2024年11月7日記事参照)。ジェトロは11月6日、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)地政学・外交政策部副部長/日本部上席研究員のニコラス・セーチェニ氏に、今後の日米関係などについてインタビューを行った。主な内容は次のとおり。
CSISのニコラス・セーチェニ氏(本人提供)
大統領選の結果について
結論を導くにはまだ早いが、現職のジョー・バイデン大統領に対する国民の不満がトランプ氏の勝利の大きな要因だったと考える。米国の進む方向性に国民の多くが不満を抱いており、ただ変えたいと思っていた。国民の多くは4年前(前回の大統領選時)よりも現在の方が経済的に豊かではないと感じており、変化をもたらす人物を求めていた。その人物こそがトランプ氏だった。トランプ氏の政策が必ずしも国民に受け入れられたというわけではないだろうが、現在の状況を変えるにはトランプ氏が最適だと考えた、それが今回の選挙の核心だった。
第2次トランプ政権のインド太平洋戦略について
第1次トランプ政権が日本と米国、オーストラリア、インド4カ国(クアッド:QUAD)の枠組みを閣僚レベルに引き上げ、バイデン政権が首脳レベルに引き上げたように(2024年9月24日記事参照)、政権交代後も引き続き「自由で開かれたインド太平洋」の構想は重要性が高く認識されると考える。一方で、トランプ氏は多国間協力の枠組みを生産的とは考えておらず、バイデン大統領のイニシアチブで立ち上がったこともあり、インド太平洋経済枠組み(IPEF、注1)には批判的だろう。
日米同盟関係について
おそらく、日本に対して何らかの要求があると考える。なぜなら、それがトランプ氏の同盟国やパートナー国に対するスタンスだからだ。一方で、日米同盟の将来について過剰に反応する必要はない。第1次トランプ政権を振り返ると、日米同盟は非常に重要な進化を遂げた。今後についても、何がどう変わるのかということではなく、信頼できる同盟国という日米関係の不変性に注目すべきだ。そうしたメッセージをトランプ氏に伝えることができれば、日米同盟関係はさらに前進していくだろう。
日米経済関係について
もちろん、トランプ氏の関税政策(注2)は懸念材料だが、交渉の余地もある。選挙戦で使われたレトリックが同盟国やパートナー国との交渉に使用されるのか、または、そのまま政策として実行されるのかは見通せないが、私は前者を支持する。つまり、関税がどの程度、どの分野に課されるかは未知数で、それは交渉を通じて決まることになる。また、トランプ氏が最も気にかけているのは、米国の雇用と製造業だ。日本企業は対米直接投資、雇用創出、地域社会への貢献を続けており、日本は米国経済の一部というメッセージがトランプ氏に響けば、経済関係について明るい見通しが持てるようになる。
(注1)日本や米国を含むインド太平洋地域14カ国が参加する枠組み。概要や動向はジェトロ特集「IPEFの動向」参照。
(注2)トランプ氏の主張を反映した共和党の政策綱領は、2024年8月9日付地域・分析レポート参照。米国シンクタンクによるトランプ氏の主張する関税政策の経済的影響に関する解説は2024年10月21日記事、2024年10月23日記事参照。
(葛西泰介)
(米国、日本)
外部リンク
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