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米スリーマイル島原発を再稼働、マイクロソフトに発電全量を供給(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月24日 15時40分

米国カーボンフリー発電企業のコンステレーションは9月20日、2019年に稼働停止していたペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機を再稼働し、その全発電量(835メガワット)を20年間にわたってマイクロソフトに供給する、前例がない規模の契約を締結したと発表した。同社によると、1979年の事故で影響がなかった1号機の今後2028年までの改修費用は16億ドルかかる見込みだ。4年後の再稼働は、2022年に制定されたインフレ削減法(IRA)に基づく原子力発電向けの税優遇措置による助成金次第としている。なお、1979年に事故を起こした2号機は再稼働の対象とはなっていない。

今回の契約は、テクノロジー業界の急増するエネルギー需要への対応と、気候変動対策の両立を目指す新たな動きとして注目される。米国調査会社ロジウムグループの試算によると、自動車の電動化や人工知能(AI)の導入に伴うデータセンターでの需要などで、2035年の電力需要は2023年比で24~29%増と見込まれており(2024年7月25日記事参照)、この電力をどのように確保するかが課題となっている。

このため、AI開発を推進するマイクロソフトやアマゾンなどのテクノロジー企業は、原子力発電に対する関心を高めている。データセンターは大容量かつ恒常的に電力を必要としていることから、風力や太陽光だけではその需要を満たすことが難しい。他方で、多くのテクノロジー企業は気候変動対策に向け野心的な目標を持っており、石炭やガスなど化石燃料による電力を使用することは回避したい考えで、原子力発電は双方の要求を満たし得るとの考えだ。

バイデン政権も、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で2050年までに原子力エネルギー容量を3倍に引き上げる旨の多国間宣言にコミット(2023年12月6日記事参照)したほか、2024年6月には先進原子炉の導入推進を図るADVANCE法(Accelerating Deployment of Versatile, Advanced Nuclear for Clean Energy Act of 2024)を成立させる(米国環境エネルギー政策動向マンスリーレポート7月号参照)など、原子力発電の活用に積極的な立場を示している。

しかし、今回発表された再稼働に対しては反対の声もある。この8月には十数人の抗議者が発電所前で再稼働に反対するデモを行い、事故の記憶と避難を余儀なくされた住民の経験を訴えた。また、「憂慮する科学者同盟」の評論家で物理学者のエドウィン・ライマン氏は、長期停止後の原子炉の安全な再稼働には予想以上の技術的困難が伴う可能性を指摘している。

(藤田ゆり、加藤翔一)

(米国)

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