フランス・オーストリア企業、チュニジアでグリーン水素開発へ覚書締結(チュニジア、フランス、オーストリア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月31日 13時0分
フランスのトタルエナジーズと再生可能エネルギー大手エレングループの合弁会社トタルエナジーズH2(TE H2)、オーストリア最大の電力会社フェアブントは5月28日、イタリア、オーストリア、ドイツ向け輸出の大規模グリーン水素プロジェクト「H2ノトス」の実施を検討するため、チュニジア政府と覚書を締結したと、TE H2とフェアブントが共同プレスリリースで発表した。
同プロジェクトでは、チュニジア南部で太陽光発電と陸上風力発電による再生可能電力を使用して、海水淡水化水を供給し、電解装置を使用してグリーン水素を生産する。初期段階で年間20万トンのグリーン水素を生産する計画で、最終的には年間100万トンに達する可能性がある。2030年をめどに開通予定の北アフリカとイタリア、オーストリア、ドイツを結ぶ専用パイプライン「SoutH2回廊」(注)を通じて、欧州市場に水素を供給する。TE H2はグリーン電力の生産からグリーン水素の生産まで、プロジェクト全体の開発、資金調達、建設、運営を担当し、フェアブントは生産された水素の輸送を担う。
TE H2のダビッド・コルシア最高経営責任者(CEO)は共同プレスリリースで「H2ノトスはチュニジアで多くの雇用を創出しながら、欧州向けのグリーン水素の主要供給者となる可能性を秘めている。現在、グリーンフィールド開発とプロジェクトの実現可能性を評価するための重要な技術的作業の段階に入っている」 と述べた。フェアブントのミカエル・シュトルグルCEOは、チュニジアが競争力のあるグリーンエネルギーを大規模に生産するために特に重要な地域という認識を強調し、パイプラインによる輸送を組み合わせることで、大規模かつ長期的な供給を保証し、チュニジアの持続可能な経済発展をサポートできるとした。また、チュニジアのファトマ・タベット・シブーブ産業・鉱山・エネルギー相は「このプロジェクトが外国企業の再生可能エネルギーへの優先的投資先として、チュニジアの魅力を強化する戦略的転機となると考えている」との期待を述べている。
(注)SoutH2回廊プロジェクトは、イタリアのガスパイプライン会社スナム(Snam)、オーストリアのトランス・オーストリア・ガスライトゥング(TAG)とガス・コネクト・オーストリア(GCA)、ドイツのバイエルンESTが主導する3,300キロに及ぶ水素専用パイプライン回廊建設計画で、北アフリカ、イタリア、オーストリア、ドイツを結び、北アフリカで生産した低コストのグリーン水素を欧州の主要な需要家群に供給できるようにするもの。各社は2022年12月に欧州委員会のTEN-E規制(2020年12月17日記事参照)に基づいて共通利益計画(PCI)申請を個別に提出済み。
(渡辺智子)
(チュニジア、フランス、オーストリア)
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