欧州農業部門、中国のEU産農蓄産物・食品に対するAD調査を懸念(EU、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月20日 15時15分
欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体のCOPA-COGECAは6月17日、中国のEU産豚肉に対するアンチダンピング(AD)調査の開始(2024年6月20日記事参照)について声明を発表した。AD調査は、EUが6月12日に中国製バッテリー式電気自動車(BEV)に対する暫定相殺関税措置を実施する方針を示したこと(2024年6月14日記事参照)への対抗とみられる。中国は2024年1月にもEU産ブランデーに対するAD調査を開始する(2024年4月11日記事参照)など、EUの中国製BEVに関する調査に反発を強めている。
COPA-COGECAは欧州委員会に対し、中国とのさらなる貿易摩擦を回避し、農畜産業以外の部門の係争がこれ以上、農畜産部門に負担を与えないよう要請した。EUからの中国向け豚肉輸出は近年、減少傾向にある。一方、EU域内ではほぼ需要がない内臓などの畜産副産物は多く輸出されている。調査はスペイン、オランダのほか、2024年1月に5年ぶりの対中輸出再開が決定したベルギーなど複数の生産国に影響を与える。中国市場を失う可能性もあり、調査結果にかかわらず、調査過程で欧州委による十分な生産者支援が必要と述べた。
今回の中国側の発表に先立つ6月13日、ドイツのメルカトル中国研究所(MERICS)は中国の報復措置に関する分析を紹介。中国は、機械や高機能工業製品、化学品、医療機器など中国で需要が高いEU製品や、中国への巨額の投資をする欧州の大手自動車メーカーを対象とした報復措置は取らず、自給可能な豚肉など農蓄産物、食品、飲料を集中的に対象とすると予測していた。
EUの2023年の農産品・食品貿易報告書によると、同年のEUから中国への輸出額は約146億ユーロで、英国、米国に次いで第3位。このうち豚肉の輸出額は約25億ユーロで、EUの豚肉輸出全体の20%(金額ベース)を占めた。
(滝澤祥子)
(EU、中国)
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