米USTR、メキシコの鉄鋼部品工場と鉱山での労働問題の解決を発表(米国、メキシコ、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月3日 11時0分
米国通商代表部(USTR)は5月30日、メキシコ政府に事実確認を要請していたメキシコ国内における2件の労働問題が解決したと発表した。
1件目は、メキシコ北東部ヌエボ・レオン州の鉄鋼部品工場における労働権侵害の事案(2024年4月3日記事参照)、2件目は、メキシコ中部メヒコ州に所在し日系企業も資本参加するティサパ鉱山における労働権侵害の事案(2024年4月5日記事参照)。ともに、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、問題解決が図られていた。2024年に米国からメキシコ政府に対してRRMを通じて5件の労働問題の確認要請がなされており、その中で解決に至ったのは今回の2件が初めて(注)。
鉄鋼部品工場の事案に関するUSTRの発表によると、問題解決に向けて、使用者のセルビシオス・インダストリアレス・ゴンサレス(SIG)が不当に解雇した元労働者に対して和解金を支払う、SIGが労働者に対して結社の自由と団体交渉権を尊重するとの中立的声明とガイドラインを周知する、メキシコ政府がSIGと労働者に対して労働権に関する研修を実施するなどの対策を講じた。
ティサパ鉱山の事案に関するUSTRの発表によると、労働問題の解決に向けて、使用者のインダストリアス・ペニョレスが不当に解雇した労働者を復職させた上で未払い分の給与を支払う、同社が不当に賞与を支給していなかった労働者に対して賞与を支給する、メキシコ政府が労働者に対して労働権侵害の通報を受け付ける窓口の情報を提供するなどの対策を講じた。
また、これらの改善策の履行を受けて、USTRのキャサリン・タイ代表は、メキシコ政府への事実確認要請と同時に停止していた、当該施設からの輸入に関する関税の清算を再開するよう、財務長官に要請した。タイ代表は、ティサパ鉱山の事案に関して、「バイデン政権は、結社の自由と団体交渉権を否定された労働者のために立ち上がることにコミットしており、現在までに、RRMを通じてこの鉱山の労働者を含む約3万人の労働者に利益をもたらしている」と述べ、RRMの成果を強調している。
(注)このほかの3件は、(1)5月28日に確認要請がなされた事案(2024年5月30日記事参照)、(2)米国・メキシコ両政府が是正計画に合意し、是正措置の履行中の事案(2024年4月24日記事参照)、(3)RRMに基づく紛争解決パネルの設置に持ち込まれた事案(2024年4月17日記事参照)。これまでのRRMに基づく措置については、USTRまたは労働省のウェブサイトを参照。
(葛西泰介)
(米国、メキシコ、日本)
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