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トランプ氏勝利がアルゼンチンに及ぼす影響、識者に聞く(アルゼンチン、米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月11日 11時35分

アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は米国大統領選挙の結果を受けて、自身のSNSを通じ、共和党の大統領候補のドナルド・トランプ前大統領に祝意を示した。2023年11月のアルゼンチン大統領選でミレイ氏が勝利した際も、トランプ氏はミレイ氏に祝意を示していた。ミレイ氏は親米国、親イスラエルの外交政策を掲げるほか、トランプ氏を支持する企業家のイーロン・マスク氏と度々面会するなど、イデオロギー的にミレイ氏はトランプ氏に近いとされている。トランプ氏の勝利がミレイ氏の政策やアルゼンチンにどのような影響を及ぼすのか。アルゼンチンのトルクアト・ディ・テラ大学のフアン・ネグリ教授に話を聞いた(2024年11月8日)。概要は次のとおり。

ネグリ氏によると、政治的、象徴的な観点では、両者には親和性がある、とする。ミレイ氏は、トランプ氏と同じイデオロギーを共有していると感じており、そのつながりを最大限に生かそうとしている、という。他方、トランプ氏の保護主義的な通商政策はミレイ氏が志向する開放主義的な通商政策と異なり、アルゼンチンにとってはマイナスだ、と指摘している。

同教授はまた、両国の関係に調和があることはプラスと主張する。ミレイ政権の経済政策を考えれば、勝者がたとえカマラ・ハリス氏であれ、IMFとアルゼンチンの間で新たな債務再編の合意は可能だったかもしれないが、IMFは元来、アルゼンチンに手厚い支援をする立場にはない。ミレイ氏と軌を一にするトランプ氏の勝利は、IMFによるアルゼンチンへの支援にはプラスに働くかもしれない。

保護主義的な通商政策については、1期目のトランプ政権がアルゼンチン産バイオ燃料にアンチダンピング税を課したように、アルゼンチン産品の市場を奪うだろうと懸念する。何が起こるかはわからないが、トランプ氏の財政政策が金利を上昇させ、アルゼンチン経済に不利に働く可能性はある。

気候変動問題では、両者の姿勢は一致している。トランプ氏は最初の任期中にパリ協定から離脱した。ミレイ氏も選挙戦でパリ協定からの離脱を掲げたが、アルゼンチンは2016年に公布した法律27270号によって同協定を批准しており、離脱は簡単ではない。

中国との関係では、恐らくトランプ氏の立場よりも、ミレイ氏自身の政治基盤の期待、国際的圧力、アルゼンチンの経済的利益といった複数の要素に左右されるだろう。ミレイ氏は最近、中国に対してより現実的だ。とはいえ、トランプ氏は、アルゼンチンが戦略的プロジェクトで中国に依存しないようにするため、2国間協定や中国からの融資に代わる金融支援を行う可能性がある。しかし、トランプ氏が保護主義的なアプローチを採用すれば、ミレイ氏は中国との関係を格下げする余地が少なくなる。さらに、ミレイ氏は農業や鉱業など、中国との関係が深い業界からの圧力にも直面している。

移民問題に関するトランプ氏の考えにアルゼンチンが共鳴する可能性はある。しかし、アルゼンチンでは、生まれながらの市民権をなくすために必要な憲法改正は複雑で、仮にそれを実現しようとしても、法的な障害と国会や世論の大きな抵抗に直面するだろう。ミレイ氏が移民問題に手を付けるとしても、その要件の厳格化や規制強化に留まる可能性が高い。今のところ、この問題に関する政府の決定的な方針はないようだ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、米国)

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