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ポルトガルのコインブラ大学、帝京大学と国際交流協定を締結(ポルトガル、日本)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月17日 0時0分

1290年設立のポルトガル屈指の名門国立大学・コインブラ大学は8月22日、帝京大学とMOU(国際交流協定)を締結した(プレスリリース)。今回の協定締結は、ICT(情報通信技術)システム関連商社の内田洋行がコインブラ大学発スタートアップのテイク・ザ・ウィンドの臨床症例シミュレーター、ボディ・インタラクトを帝京大学に紹介したことが端緒となった。MOU締結を機に、コインブラ大学と帝京大学シミュレーション教育研究センター(TSERC)の交流などを進めていく予定だ。

コインブラ大学のヌノ・メンドンサ教授(産学連携担当副学長補佐)によると、同大学は、1990年代当初からイノベーション分野への支援を開始した。1991年に大学発スタートアップ育成を行う産学連携IPNインキュベーターを設立し、学界、スタートアップ、既存企業および投資家の橋渡しを行っている。2003年には各分野の研究イノベーションの技術をビジネスにつなげることを目的にUCビジネスセンターが設立された。現在、IPNには171のスタートアップが在籍しスケールアップを目指しており、IPNとUCビジネスセンターは連携しながら、EU補助金の獲得のための活動や、特許をはじめとする法律相談、専門家による事業化アドバイス、ビジネスマッチングなど、実務的な支援に力を入れている。上述のテイク・ザ・ウィンドのほか、ユニコーン企業フィードザイ(feedzai)、2024年に日本に進出したテレコム関連ソフトウェア企業WITソフトウェアも同インキュベーター出身だ。

TSERCの金子一郎教授によると、ボディ・インタラクトの特徴は、臨床症例シナリオの豊富さにあり、比較的シンプルで臨床の実例に沿ったシミュレーションが用意されている。加えて、テイク・ザ・ウィンドは、「医療分野における批判的思考をいかに『学修』するか」をコンセプトにソフトウェア開発をしており、経験学習理論に基づく実践的なシミュレーションを通じて、学生に診療に関する実践的な知識と臨床推論能力を習得する学修環境を提供している。現在、ボディ・インタラクトは約40カ国語に翻訳され、日本では帝京大学と昭和大学が活用している(注)。

ポルトガルは、他の西欧諸国に比べて低廉な投資・生活コストや、デジタルノマドビザの導入(2023年1月10日記事参照)などによる積極的な起業家誘致、世界最大級のテックイベント・ウェブサミットの開催(2023年12月4日記事参照)などを背景に、スタートアップのエコシステムが急成長。2024年4月までにユニコーン企業7社が輩出し、欧州テックシーンで注目を集めつつある(2024年2月28日付調査レポート参照)。コインブラ大学は特にヘルステック分野で大学発スタートアップ創出を牽引しており、同大学が開発した「ソフトアクチュエーター搭載型人口筋肉ロボットハンド」など、質の高いヘルステック技術の事業化が期待される。メンドンサ教授は「本学発スタートアップと日本企業との連携可能性を探りたい」と述べ、日本とのイノベーション交流への期待を表明した。

写真 MOU調印式に参加する(左から)ヌノ・メンドンサ教授、ジョアン・ヌノ・カルバオン・ダ・シルバ副学長、太田誠・在ポルトガル日本国大使、カルロス・ロバロ・コルデイロ医学部長、冲永佳史学長(帝京大学提供)

MOU調印式に参加する(左から)ヌノ・メンドンサ教授、ジョアン・ヌノ・カルバオン・ダ・シルバ副学長、太田誠・在ポルトガル日本国大使、カルロス・ロバロ・コルデイロ医学部長、冲永佳史学長(帝京大学提供)

(注)ヌノ・メンドンサ教授へのインタビューは2024年7月10日と8月22日、金子一郎教授へのインタビューは2024年8月30日に実施した。

(小野恵美、森安矢)

(ポルトガル、日本)

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