水素発電導入に向け、関連規制の枠組み策定へ(シンガポール)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月15日 10時55分
シンガポールのエネルギー市場監督庁(EMA)は8月6日、政府の一括調達サイト「GeBiZ」を通じて、発電分野の水素導入を支える法規制の枠組みを策定するコンサルティングサービスの入札を開始した。
政府は2022年10月に国家水素戦略を発表し、水素発電の技術革新が進展すれば、2050年までに国内の電力需要の最大半分を水素が占めるとの見通しを明らかにした(2022年10月31日記事参照)。水素は、同国が2050年に二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)とする目標を達成する上で重要な役割を果たすと期待されている。8月12日付の地元英字紙「ストレーツ・タイムズ」によると、入札の落札会社は発電分野の水素導入に関する将来の政策、法規制の整備について提言を行う予定だ。ただし、EMAはこれまでに、水素の輸入に関する具体的な時期などを明らかにしていない。入札は8月28日で締め切られる。
2030年までに水素だき可能な複合発電ガスタービンの設置相次ぐ
水素導入をにらみ、天然ガスと水素の複合発電が可能なガスタービンの設置が相次いでいる。地場発電会社ケッペル・インフラストラクチャー・ホールディングスは、30%の水素を含む燃料で複合発電ができるコンバインドサイクル・ガスタービン(CCGT)を備えたケッペル・サクラ・コージェン発電所を建設中で、2026年中に完成の予定だ。また、地場複合企業セムコープ・インダストリーズが建設を進め、水素を燃料として利用できるコンバインドサイクル発電所(CCPT)も、2026年の完成を予定している。YTLパワーセラヤも水素だきが可能なCCGT発電所を建設する計画だ(2027年完成予定)。
さらに、EMAの子会社メランティ・パワーは2023年5月、水素を燃料として利用できる発電所を着工した。同発電所には、燃料が遮断された際の立ち上げに時間がかかるCCGTとは異なり、10分と早期に立ち上げが可能な開放サイクルガスタービン(OCGT)2基が設置される。電力遮断があっても電力供給を継続できる態勢を維持するのが狙いだ(2025年稼働予定)。また、EMAは2024年4月、早期立ち上げが可能な発電所の設計・所有・運用について、発電会社パシフィックライト・パワーに発注したと発表した〔2025年第2四半期(4~6月)稼働予定〕。このほか、同庁は同年6月、2基のCCGT新設に関する提案依頼書(RFP)の募集を開始した。同2基は2029年と2030年の稼働開始を予定している。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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