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米シンクタンクが対中経済政策を検証、追加関税の米側コスト指摘、CPTPP参加提言も(米国、中国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月24日 11時0分

米国シンクタンクのランド研究所は10月22日、米国の対中経済政策の有効性を検証した報告書を発表した。米国の対中経済政策の主要目標の(1)公正な貿易の推進、(2)米国の利益の確保の観点から、トランプ前政権とバイデン政権が講じた政策の有効性を検証した(注1)。概要は次のとおり。

(1)公正な貿易の推進の観点では、米国が2018年以降に中国製品に課した1974年通商法301条に基づく対中追加関税(301条関税)などを検証対象に挙げた。報告書は301条関税の賦課後に対中輸入額と貿易赤字が減少したことを指摘し、一定の成果があったとしつつも、中国における米国企業への公正な待遇の確保や、中国政府による自国企業への補助金提供の抑制などの進展はほぼないと結論付けた。また、対中貿易の変化は、中国と米国の双方に経済的コストをもたらしたとして、米国側では製造業の輸出・生産・雇用が減少し、物価が上昇し、特に低所得者層の厚生水準を低下させたと負の影響を指摘した。

(2)米国の利益確保の観点では、ポリシリコン、リチウム、グラファイト(黒鉛)、レアアース、先端半導体の5分野に関する米国の各政策を検証対象に挙げた。このうち、電気自動車(EV)用のリチウムイオンバッテリーなどに用いられる黒鉛では、米国内での天然黒鉛採掘や人工黒鉛製造に向けた投資に対する国防生産法に基づく補助金などが功を奏し、世界市場シェアの7割を占める中国から米国内サプライヤーへの調達の多元化が進展していると指摘した。これら産業政策のほか、輸出管理の厳格化や、対米投資審査の強化を含めて、米国の経済関連の利益を守る観点では高い成果を上げたと評価した。

同報告書では政策提言も盛り込み、関税に関しては、中国が支配的な品目、かつ米国の経済・国家安全保障に不可欠な品目については、追加関税を維持すべきとした一方、消費財や中間財については、引き下げに向けて中国と交渉すべきとした。投資に関しては、米国の国家安全保障を脅かさない限りは、引き続き米国で歓迎されることを中国に対して明確に説明すべきとした。貿易に関しては、米国の経済政策の目標を達成するために、米国は環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)の参加交渉に臨むべきとした(注2)。

(注1)検証期間は2017~2024年。報告書での(1)公正な貿易は、米国企業が外国企業と同等の市場アクセスを有し、外国が米国と締結した貿易協定を順守し、また、外国政府が不公正な貿易慣行を行わないことを指す。(2)米国の利益は、貿易投資が拡大し、米国企業の知的財産が保護され、サプライチェーンの一極集中が軽減されることを指す。

(注2)環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を基盤として、2018年12月に発効した。米国は2016年2月にオバマ政権下でTPPに署名したが、2017年1月にトランプ政権下で離脱した。

(葛西泰介)

(米国、中国)

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