マレーシアが再エネ電力取引所を設立、シンガポールへの輸出開始(マレーシア、シンガポール)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月18日 10時50分
マレーシアのエネルギー移行・水資源変革省(PETRA)は4月15日、マレーシアエネルギー取引所(ENEGEM)を設立した(PETRA声明)。ENEGEMでは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来のグリーン電力を、最大300メガワット販売する見込み。
PETRAは、ENEGEMの設立が、マレーシアの再エネ移行への取り組み、およびASEANパワーグリッド(APG)を通じた域内電力統合の動きにも沿ったものと説明。ENEGEMでは、PETRA傘下のエネルギー委員会が発行した「越境電力販売ガイド(CBES)」(2024年4月版)に基づき、国境を超えた再エネ電力の売買を行う。
マレーシア政府は、前政権下の2021年10月、国内の再エネ産業の発展促進を目的にシンガポールへの再エネ輸出を禁止したが、現政権は2023 年5月にこの方針を撤回していた(2023年5月15日記事参照)。経済省はこの際、国際送電のための電力取引市場構想を発表しており、エネルギー移行ロードマップの策定時には、2024年にも再エネ取引所を設立する方針を明らかにしていた(2023年9月4日記事参照)。
ENEGEMは、国営電力会社テナガ・ナショナル(以下、TNB)の独立した部門(シングルバイヤー)が運営する。対象となる電力は、太陽光、水力、エネルギー委員会が承認したその他の再エネ。落札者は、シングルバイヤーとの間で電力供給に関する契約を締約し、電力は国際送電網を通じて供給される。
シンガポールを皮切りに再エネ電力の供給を開始
試行プロジェクトとして、既存の送電網を活用しシンガポール向けに100メガワットの電力を供給する。発表翌日の4月16日から、PETRAまたはシングルバイヤーを通じて、入札への参加登録を受け付けている。入札には、シンガポール電力市場での発電や小売ライセンスを保有する再エネ事業者が参加できる。
PETRAはリリースの中で、「ENEGEMを通じた入札によって、マレーシアは国境を越えた電力統合の枠組みを強化できる」と説明。同時に、再エネの開発やASEANの越境エネルギー取引に向けた地域協力につなげることができると強調した。
ENEGEMの設立に対しては、好意的な反応が報じられている。証券会社CGSインターナショナルは「試行入札は、マレーシアのエネルギー輸出を実現する重要な一歩」と評価し、特にTNBとYTLパワーが主な受益者になると見通した。また、メイバンク投資銀行は「大規模太陽光発電(LSS)と企業グリーン電力プログラム(CGPP)(注)に依存する現在のマレーシアの再エネ産業にとって、再エネ輸出は、生産拡大の原動力や新たな収入源になる」との期待を示した(「エッジ」4月16日、「スター」4月17日)。
(注)企業消費者が太陽光発電事業者から、太陽光エネルギーを仮想的に購入できる再エネ推進イニシアチブ。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、シンガポール)
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