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三菱UFJ銀行ダッカ所長に聞く現地金融機関の課題(バングラデシュ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月17日 10時40分

バングラデシュでは、シェイク・ハシナ氏が首相を辞任して1カ月が経過し、暫定政権は経済再建、特に銀行セクターの改革を目指している。現地金融機関の状況や課題について、三菱UFJ銀行ダッカ事務所の木村健治所長に聞いた(インタビュー:9月9日)。

(問)バングラデシュの銀行セクターの現状は。

(答)バングラデシュには国営銀行9行、民間商業銀行43行、外国銀行9行の計61行(デジタル銀行1行を除く)の銀行があり、総貸出残高は約16兆タカ(約19兆2,000億円、1タカ=約1.2円)になる。ハシナ政権崩壊後、旧政府とのつながりが強い企業グループの1つが経営する複数の銀行を経由し、不正融資や詐欺事件に関与していたことが明るみとなり、その被害金額は1兆タカ以上相当(総貸出残高の5%超)と報道されている。直近の報道ベースで、全銀行の不良債権比率は平均で約13%に上るが、バングラデシュの不良債権認定基準はグローバル基準と比べて緩く、実際にはその2倍近くあるとも言われている。従来の慢性的なドル不足とも相まって、多くの銀行が厳しい経営環境にある。

(問)現地日系企業にとっての課題は。

(答)足元では、バングラデシュの銀行の多くが厳しい経営環境にある。バングラデシュでは、預金保険制度で保護される上限が20万タカまでで、取引する銀行の経営状況の把握には注意が必要だ。預金の分散や取引銀行の見直しなどが一案と考えられる。

また、当地での輸入にはL/C開設が必須だが、経営状況の厳しい銀行は特に外貨の調達に苦慮して、L/C(信用状)決済の遅延も散見されており、L/C開設銀行にも注意を払う必要がある。加えて、2013年以降に設立された第4世代といわれる銀行は、前政権時代に銀行免許を取得して政治的な影響を受けている可能性が高く、業歴も浅いことから、経営の安定性という観点からは回避した方が良いと思われる。

(問)今後必要になってくる改革は。

(答)不良債権処理問題への対応は、喫緊の課題だ。加えて、株主や経営陣が1つの企業グループのメンバーで占められているなど、ガバナンス(企業統治)面の問題を抱える銀行も多く、改善が必要だ。暫定政権下、バングラデシュ銀行(中央銀行)総裁にエコノミストでIMFでの勤務経験が長いアーサン・モンズール氏が就任した。不正に関与した銀行への流動性供給の停止や新規融資・L/C発行の停止などに加え、新たに中銀内に委員会(Banking Committee)を設置し、既存銀行のガバナンス調査や資産査定に着手するなど、矢継ぎ早に改革に取り組んでいる。

銀行セクターの実態を把握し、信用を取り戻すには、しばらく時間を要すると思われるが、改善の方向に進んでいるため、早期の健全化を期待したい。

写真 三菱UFJ銀行ダッカ事務所の木村健治所長(本人提供)

三菱UFJ銀行ダッカ事務所の木村健治所長(本人提供)

(安藤裕二)

(バングラデシュ)

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