生成AI普及で枠組みモデルを刷新、中小企業支援強化へ(シンガポール)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月6日 1時10分
シンガポールのヘン・スイキャット副首相は5月30日、官民共同で策定した「生成人工知能(AI)のためのガバナンスの枠組みモデル」(注1)を正式発表した。同国は、責任ある生成AIのツール開発や中小企業への導入支援など、生成AIの普及に向けた施策を相次いで打ち出している。
同国は2019年、責任あるAIの利用に向けて「AIのガバナンスの枠組みモデル」を発表していた。今回発表した新たな枠組みモデルは、生成AIの普及を受けて、情報通信開発庁(IMDA)と「AIベリファイ団体」(注2)が業界の意見を収集し、内容を刷新したものだ。同モデルは、(1)エンドユーザーに対する責任、(2)データの質、(3)開発と導入までの透明性、(4)問題が生じた場合の報告、(5)テストの基準と第三者による認証、(6)生成AI特有の危機に対するセキュリティー、(7)コンテンツの出所、(8)リスク回避のための安全性の研究・開発、(9)公益のためのAIという観点から、信頼できるAIエコシステムを育成するための枠組みを示している。
また、ヘン副首相はASEAN域内でのシンガポールの取り組みとして、「AIガバナンスと倫理に関するASEANガイド(ASEAN Guide on AI Governance and Ethics)」の策定を率いたと述べた。同国は国連の人口1,000万人以下の「小国フォーラム(FOSS)」で、小国の政策担当者向けの「デジタルFOSS AIガバナンス・プレーブック(Digital FOSS AI Governance Playbook)」の作成に向け、ルワンダと協力している。
中小企業の生成AI導入支援で米マイクロソフトと提携
一方、貿易産業省管轄下のシンガポール企業庁(エンタープライズシンガポール)は5月21日、米国のマイクロソフトとの提携により、中小企業が同社の生成ツール「マイクロソフト365コパイロット(Microsoft 365 Copilot)」を導入する際のライセンス費用のうち、最大50%を同庁が負担すると発表した。同庁は同支援スキームを通じて、地場中小企業1,000社以上を支援する計画だ。
シンガポールは2023年12月、2019年に発表した国家AI戦略の改定版「国家AI戦略(NAIS2.0)」を発表し、先端製造や金融、教育などの分野でAI導入を推進していく方針を明らかにしていた(2023年12月12日記事参照)。
(注1)「生成AIのためのガバナンスの枠組みモデル(Model AI Governance Framework For Gen AI)」は、AIベリファイ団体のサイトからダウンロードできる。
(注2)AIベリファイ団体は2023年6月に発足した責任あるAI普及を目指す団体(2023年6月15日記事参照)。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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