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バイデン米政権が自主的炭素市場の発展に向けた新たな措置を発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月30日 13時20分

添付資料PDFファイル(69 KB)

米国のバイデン政権は5月28日、自主的炭素市場(Voluntary Carbon Markets:VCM)の発展に向けた措置を発表した。発表には、VCMに参加する際のガイドラインや、VCMの推進に向けた支援措置などが盛り込まれている。

VCMとは、企業などが再生可能エネルギー導入や植林などを行うことで削減・吸収した温室効果ガス(GHG)の量に応じて「炭素クレジット」を発行し、それを自主的に取引する民間主導の炭素市場のこと。クレジット購入者は、その分を自社の活動に伴って生じるGHG排出量と相殺することができる(2021年9月15日付地域・分析レポート参照)。バイデン政権の進める2050年カーボンネットゼロの達成に向けて、排出量の削減が困難な分野を中心にさらなる活用が期待されている。他方で、クレジットの発行元のプロジェクトが、実際にはクレジット相当分のGHG排出量削減を実現していないなどの批判がなされ、利用をためらう企業もみられるようになるなど、信頼性の向上が課題となっていた。(「ウォールストリート・ジャーナル」紙5月28日)。

今回の発表では、VCMに参加する際のガイドラインや、VCMの推進に向けた支援などが盛り込まれた。ガイドラインでは、炭素クレジットを発行する企業などに対し「クレジットの創出活動は環境や社会への損失を防ぎ、利益の共有を支援するものでなくてはならない」と規定するとともに、「炭素クレジットとその活動は、信頼できる基準を満たし、真の脱炭素化を満たすものでなければならない」として、6つの事項を求めている(添付資料参照)。

またガイドラインでは、クレジットを創出する企業などの取り組みと併せ、クレジットの認証機関に対しても適切な基準の整備・管理などを通じてクレジットの信頼性を高めるための措置を講ずることを求めている。クレジットの利用者に対しても、(1)クレジットの利用よりも自社のバリューチェーン内で排出量削減を優先する必要があること、(2)購入したクレジットと相殺したクレジットを適切に公開すること、(3)高い基準を満たすクレジットに依拠することなどを求め、需要側・供給側双方でVCMの信頼性の向上を企図している。

ガイドライン以外の措置には、米国エネルギー省(DOE)や米国農務省(USDA)による支援策などが盛り込まれた(注)。

(注)DOEからは、良質な炭素除去クレジットを生み出す企業に対するインセンティブが発表された。DOEは優良企業を表彰すべく選定作業を進めており、今回の発表では24プロジェクトに対し、120万ドル分のクレジットを直接購入するとした。うち9プロジェクトが二酸化炭素(CO2)回収と貯蔵に関するもの、7プロジェクトがバイオマス(植物・藻)によるCO2吸収・貯蔵に関するもの、5プロジェクトがカルシウムやマグネシウムを含む岩石との反応によるCO2除去に関するもの、3プロジェクトが地中などへの貯留に関するもの。今後も10プロジェクトが追加選定され、それぞれ300万ドル分のクレジット購入がなされる予定。USDAからは、農林部門のVCM参入を容易にするための仕組み作りに向けた情報提供要請が発表された。農林部門のVCM参入は、GHG排出量の削減に向けて有望なツールとされているものの、コストや技術的な困難さなどを理由として十分に進んでいない。VCMへの参入希望者に対し、技術的助言を行う仕組みを構築するとともに、参入に必要となる手順などを明確化することなどを通じ、参入障壁を下げていきたい考えだ。

(加藤翔一)

(米国)

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