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欧州委委員長、2029年までの政治指針を発表、競争力強化を最優先(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月30日 0時30分

添付資料PDFファイル(212 KB)

2029年までの続投が決まった欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(2024年7月19日記事参照)は7月18日、今後5年間の政治指針を発表した。欧州理事会(EU首脳会議)が採択した戦略アジェンダ(2024年7月4日記事参照)に沿うかたちで競争力や防衛・安全保障の強化を最優先課題に位置付ける。一方で、欧州型社会モデルの推進も掲げており、欧州議会の右派・左派の要求に幅広く配慮した内容となっている。

競争力強化に向け、企業の欧州グリーン・ディール対応を支援

産業界の競争力強化策(添付資料表参照)の柱となるのは、企業の規制対応負担の軽減と投資の促進だ。欧州グリーン・ディールに関し、企業負担が課題となっていることから、競争力強化の観点から「クリーン産業ディール」を新たに提案する。前提として、従来の温室効果ガス(GHG)排出削減目標(2021年4月22日記事参照)を堅持し、GHG排出90%削減を定める2040年目標案(2024年2月14日記事参照)の法制化を目指す。その上で、成立済みの欧州グリーン・ディール関連法(2024年6月6日記事参照)の実施において必要となる、エネルギー集約型産業などの脱炭素化に向けた環境整備を行う。具体的には、産業界脱炭素化促進法案を提案する予定だ。同法案は、エネルギー集約型産業や関連インフラ整備への投資促進、規制の簡略化や許認可の迅速化、脱炭素化技術の域内での開発、生産、導入を支援する。

このほか、競争力強化策の一環として、重要原材料の確保に向け2次原材料の需要創出を目指す循環型経済法案やバイオ技術の実用化を後押しする欧州バイオ技術法案などを発表する予定だ。人工知能(AI)については、域内の技術革新を促進すべく「AIファクトリー」(2024年2月1日記事参照)の立ち上げを欧州委新体制発足後100日以内に実施するほか、AI活用戦略を加盟国や産業界とともに策定する。

課題は財源だ。政治指針は、今後5年間の技術開発が今後50年間の世界経済におけるEUの地位を決めるとして、EUレベルでの公共投資を大幅に増やす方向。その核となるのが、脱炭素化技術、バイオ技術、AIなどの戦略的な重要技術に投資する欧州競争力基金の設置だ。しかし、その財源と目されるEU名義の共同債については言及されていない。欧州理事会が採択した戦略アジェンダにおいても、欧州競争力基金に相当する大型基金に関する言及がないことから、加盟国間の温度差が大きいとみられる。このことから、基金設置に向けた今後の協議は難航が予想される。

(吉沼啓介)

(EU)

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