シンガポール、アジアの脱炭素化に最大5億ドル拠出へ(シンガポール)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月27日 16時5分
シンガポールのグレース・フー環境持続相は11月12日、アゼルバイジャンで開催された国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で、アジアの脱炭素化プロジェクトを支援する「アジアの脱炭素化への移行(トランジション)融資パートナーシップ(FAST-P)」に、最大5億ドルを拠出すると発表した。
FAST-Pは、政府や民間、慈善団体の連携による「ブレンドファイナンス(注)」の枠組みを通じて、アジアの脱炭素化プロジェクトに融資するイニシアチブだ。総額で最大50億ドルの融資を目指している。テオ・チーヒエン上級相兼国家安全保障調整相とシンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)が2023年12月、FAST-Pの導入を発表していた(2023年12月4日記事参照)。MASによると、シンガポール政府は、FAST-Pに参画する他の政府や金融機関、団体などパートナーが拠出する資金の合計と同額を、最大5億ドルまで提供する方針だ。
FAST-Pは、(1)石炭プラントの早期段階的廃止や蓄電池などに特化した「エネルギー移行・ファイナンス(ETAF)」、(2)再生可能エネルギーや電気自動車(EV)、ごみ処理などグリーン・インフラに特化した「グリーン投資パートナーシップ(GIP)」、(3)排出削減が困難な分野の脱炭素化に取り組む「産業変革プログラム(ITP)」の、3つのプログラムからなる。MASは同日、米国の資産運用会社ブラックロック、国際金融公社(IFC)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、日本貿易保険(NEXI)、香港の保険会社AIAグループと、ITPのプロジェクト開発で相互協力する意向表明書(SOI)に署名した。
ラビ・メノン気候変動対策大使(MAS前長官)は同日、「シンガポールの二酸化炭素(CO2)排出量は、全世界の排出量のわずか0.1%を占めるに過ぎない」と指摘した。しかし、「アジアの脱炭素化の推進のため、パートナーと協力して大きな役割を果たしたい」と強調した。
シンガポールの英字紙「ストレーツ・タイムズ」(11月23日)によると、フー環境持続相は11月23日、帰国前の会見で、次回(2025年)のCOP30が開催されるブラジルでは気候変動への適応策が焦点になると述べた。同相は、「(シンガポールが)気候変動適応に向けた新たな資金調達策の確保で積極的な役割を果たしたい」と意向を示した。
(注)公的開発資金や慈善事業資金と民間資金を組み合わせて、投資規模を拡大する仕組み。民間資金のみでは投資が難しいプロジェクト向けの資金調達手段として利用される。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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