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岩手県の北三陸ファクトリー、日本初のウニでのEU HACCP認証を取得(岩手、日本、EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月26日 1時30分

岩手県洋野町に本社を置き、ウニを中心とする水産品の加工・販売を手がける北三陸ファクトリーは12月18日、ウニ加工を行う本社工場がEU向けの輸出水産食品取扱施設「EU HACCP(注1)」に認定されたことを発表した(農林水産省「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品取扱認定施設」リストのNo.78)。

日本国内において、ウニやウニ加工品でのEU HACCP認定は初の事例となる。初回の登録輸出品目は冷凍ウニ、冷凍つぼ抜きウニ、冷凍塩ウニ、冷凍蒸しウニの4品目だが、今後の追加登録も視野に入れている。

北三陸ファクトリーがEU HACCP認証の取得を本格的に検討し始めたのは2021年。EU HACCPの認定には、加工施設だけでなく漁船や市場の基準まで含まれていることに加え、当初はウニの認定にあたっても生産海域の指定やモニタリングが必要とされており、この対応に自治体などの協力も必要となることから、企業単体では対応が困難とみられていた。しかし、後ほど条件が変更となり、ウニのEU輸出においては、二枚貝などでは今も求められる海域指定が必須とされなくなったことから、施設登録に向けての手続きが本格化した。

北三陸ファクトリーでは、高品質なウニや海藻などの水産品が採取できる北三陸・洋野町に拠点を構え、「ウニ再生養殖システム」(注2)の技術をもとに、海洋環境に優しい持続可能な水産業を掲げている。ウニの安定供給のため、2025年には国のイノベーション推進事業である中小企業イノベーション創出推進事業(Small/Startup Business Innovation Research、SBIR)を活用し、陸上養殖にも取り組む予定だ。海外展開にも意欲的で、2023年度までの2年間、ジェトロの新輸出大国コンソーシアム事業による専門家のハンズオン支援を受け、オーストラリアでの現地法人設立、中東最大級の食品総合見本市「Gulfood」への出展、海外バイヤーの受け入れ・商談などを行った。

欧州には、2025年5月開催のSeafood Expo Global(スペイン・バルセロナ)に出展を予定しており、既にイタリア、フランス、オランダなど各地からの引き合いもあることから、今後の販路拡大が期待されるところだ。同社の眞下美紀子副社長〔代表取締役COO(最高執行責任者)〕は「欧州の皆さんに日本のウニのおいしさをしっかりとお届けできるよう、これからも良い製品づくりに努めてまいりたい」と意気込みを示している。

写真 北三陸ファクトリーの外観(同社提供)

北三陸ファクトリーの外観(同社提供)

写真 実入りのよい北三陸ファクトリーのウニ(同社提供)

実入りのよい北三陸ファクトリーのウニ(同社提供)

写真 海外バイヤーによる視察(ジェトロ撮影)

海外バイヤーによる視察(ジェトロ撮影)

(注1)HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、製品の安全性を確保するための衛生管理の手法。EUに水産品を輸出するためには、最終食品に加工するまでの全ての加工施設などが、輸出元国の政府によるEU HACCPに基づく認定を受ける必要がある。

(注2)近年、ウニなどによる海藻の食べ尽くしにより、藻場が消えてしまう「磯焼け」が問題となっている。磯焼けとなった海では痩せた実入りの悪いウニしか採れなくなるが、北三陸ファクトリーではこの痩せウニを再生・養殖し、短期間で実入りや味覚の改善を図るとともに、藻場を守ることも可能な「ウニ再生養殖システム」を導入している。

(米倉大輔)

(岩手、日本、EU)

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