トランプ氏有罪評決は共和党の団結を促すも、選挙への影響は不透明(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月3日 10時45分
米国のドナルド・トランプ前大統領が5月30日、2016年の大統領選挙時に行った不倫口止め料の不正会計処理などに関する34の罪状について、ニューヨーク州最高裁判所の陪審員により有罪と評決された(2024年5月31日記事参照)。今回の有罪評決は、トランプ陣営にとって、11月の大統領選挙への逆風との指摘がある一方、共和党の団結を強めるとの見方もあり、依然として選挙戦への影響は不透明だ。
今回の評決が下された後、連邦下院のマイク・ジョンソン議長(ルイジアナ州)や上院院内総務のミッチ・マコーネル議員(ケンタッキー州)などの共和党議員は、トランプ氏は今回の評決を不服として控訴し勝利するだろう、との見解を示した。特に、これまで数カ月間、裁判に関するコメントを拒否してきた共和党の重鎮、マコーネル議員が見解を示したことで、トランプ氏と距離のある議員たちも含めて、党内の団結が深まると指摘されている(議会専門誌「ザ・ヒル」5月30日)。マコーネル議員は3月に、トランプ氏を支持すると述べていた(2024年3月7日記事参照)。トランプ氏の対抗馬で3月に予備選挙からの撤退を表明したニッキー・ヘイリー元国連大使も5月に、大統領選挙ではトランプ氏に投票すると明かしている(2024年5月23日記事参照)。
また、トランプ氏の選挙陣営は評決翌日の5月31日、評決直後から少額献金が拡大し、1日当たりとしては、これまでの2倍近い過去最高の3,480万ドルが寄付された発表した。このうち、今回初めて献金した人が29.7%を占めたとし、支持層が拡大していることを示唆している。
一方で、今回の有罪評決を機に、民主党はトランプ氏への批判を強めている。ジョー・バイデン大統領は、今回の結果を不正だと主張するトランプ氏に対して、「無謀で、危険で、無責任だ」と述べた。また、下院司法委員会の少数党筆頭理事を務めるジェリー・ナドラー議員(ニューヨーク州)は「マンハッタンが彼(トランプ氏)を重罪犯として有罪にしたことを、ニューヨーカーとしてこれ以上ない誇りに思う」と痛烈に批判した(政治専門紙「ポリティコ」5月30日)。
今回の有罪評決について、共和党、民主党からそれぞれ声があがっているが、マリスト世論調査研究所の世論調査(注)によれば、有権者の約70%はトランプ氏が有罪になっても投票行動に変化はないと回答した。加えて、11月の大統領選挙まではまだ半年弱あり、その間に、大統領候補者同士による6月27日の討論会など(2024年5月16日記事参照)、選挙結果に影響し得るイベントが複数控えている。今回の評決が選挙結果に与える影響は、依然として不透明だ。
(注)実施時期は2024年5月21~23日。対象者は全米の成人1,261人。
(赤平大寿)
(米国)
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