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301条関税見直し、バイデン米政権は戦略的アプローチ強調、労組も歓迎、産業界からは批判も(米国、中国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月15日 14時0分

米国のジョー・バイデン大統領は5月14日、米国通商代表部(USTR)による1974年通商法301条に基づく対中追加関税の見直し完了に伴い、USTRに対して、鉄鋼・アルミニウム、半導体、電気自動車(EV)、バッテリーなどの追加関税率の引き上げを指示した(2024年5月15日記事参照)。この発表に対し、米国政府高官、労働組合、業界団体などからさまざまな声が上がっている。

財務省のジャネット・イエレン長官は「中国による長年にわたる特定の不公正な貿易慣行に対応するために必要な、戦略的かつ的を絞った措置」と指摘した。商務省のジーナ・レモンド長官も「クリーンエネルギーや半導体など、米国の主要産業を保護するための通商政策への戦略的アプローチ」と述べ、301条関税の見直しは戦略的に行われたと強調した。バイデン大統領も、USTRに追加関税率の引き上げを指示するファクトシートで、関税率の引き上げ指示は戦略分野に対象を絞っているとした。また、同盟・パートナー国を念頭に「全ての国からの全ての輸入品に対して価格を引き上げる無差別な10%の関税を適用するのではなく、中国の不公正な慣行という共通の懸念に対処するための協力を強化する」と述べ、全輸入品に一律10%の関税賦課を示唆しているドナルド・トランプ前大統領との違いをアピールした。

今回の発表に対して、対中強硬派の議員や労働組合からは支持する声が出ている。米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」は同日の声明で、301条の見直し結果は2023年12月に同委がまとめた提言(2023年12月15日記事参照)に沿ったものとし、「中国への依存をさらに減らし、中国の輸出急増が米国の産業と労働者を衰退させ、国家安全保障を損なうことを防ぐために、われわれは緊急に行動しなければならない」と、発表内容を支持する姿勢をみせた。北米最大規模の労働組合である米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は、米国内の製造能力を活性化し、新たな雇用を創出し、国家および経済安全保障を前進させられるとして、「徹底的な調査の後、中国からのさまざまな不公正な貿易製品に対する関税を、維持または引き上げるバイデン大統領の発表を強く支持する」との声明を発表した。太陽エネルギー産業協会(SEIA)も「米国の製造事業者のビジネス状況の改善に役立つことは明らかだ」と歓迎している。

一方で、批判的な声明を発表した業界団体もある。中国でビジネスを行う270以上の米国企業が参加する米中ビジネス評議会(USCBC)は、「米国企業が米国内外で競争することを困難にし、米国の雇用を犠牲にし、インフレが進行している最中に米国の製造業者と消費者が支払う価格を上昇させる」とし、「結果に失望している」と発表した。適用除外制度については、USCBCの要望どおりに設けられることを歓迎しつつも、範囲は狭いとし、今後行われるパブリックコメントで意見を表明すると述べた。全米小売業協会(NRF)は、追加関税の維持は消費者が日用品に支払うコストを増加させるとし、「非常に失望している」と批判した。さらに、「市場アクセスと関税削減の両方に焦点を当てた、新しい自由貿易協定(FTA)が必要だ」とも述べた(注)。

今回のホワイトハウスやUSTRの発表では、具体的な追加関税率の引き上げ日時や関税分類番号(HTSコード)、適用除外制度の手続きなどは示されていない。今後、詳細が明らかになるにつれ、産業界などからより大きな反響が出てくるとみられる。

(注)バイデン政権は、関税の引き下げに基づいて通商政策を定義するのは誤りだとし、市場アクセスを伴う通商交渉は行わない方針を示している(2024年2月9日付地域・分析レポート参照)。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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