ベナン、中国の調停によりニジェール産原油の禁輸措置を緩和(ベナン、ニジェール、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月28日 0時45分
ベナン政府は5月16日、中国の調停により、ニジェール産原油の禁輸措置を緩和すると発表し、ニジェール南東部のアガデム油田から原油100万バレルを陸上パイプラインでベナンのセメ港に移送し、中国に輸出するとした。
2024年3月に完成した両国間のパイプライン(2019年9月24日記事参照)が本格運用を迎える中、2023年7月のニジェール軍事クーデター(2023年7月31日記事参照)の影響で両国は緊張関係が続いている。これは、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の決議を受けて、ベナンが国境封鎖を行ったためで、ニジェールはベナンからの物資調達をブルキナファソ経由に変えるなど対応を行ってきた。2024年2月に入り、ECOWAS制裁が解除されると、ベナンもニジェールに国境再開を求めたが、ニジェールはベナン北部がテロリストの拠点となっていると非難し、今もなお国境再開を拒絶している。そのため、ベナンもニジェールが国境再開に応じない限り、同国産原油の移送を禁止するとしていた。
この問題を受け、同パイプラインを敷設した中国石油天然気集団(CNPC)の総経理らがベナンを訪問し、彭驚濤・駐ベナン中国大使も同席し、ベナン政府との交渉に臨んだ。ベナン側からパトリス・タロン大統領や、サム・アダンビエネルギー・水利・鉱山相、オルシェグン・バカリ外相ら政府要人が面談に応じ、ベナンとニジェール、中国の共通利益は損なえないとして、両国の国境が封鎖されたまま、禁輸措置を一時解除する決定を行った。アダンビエネルギー・水利・鉱山相は報道陣に対し、この決定はあくまで暫定的と強調しつつ、パイプライン運営には国家レベルの協力が必要として、あらためてニジェールに国境の全面再開を求めた。
ベナンは国境封鎖により、ニジェール向け物流が途絶え、同国経済に打撃を受けている。一方、ニジェールはパイプラインの運用により、原油輸出能力が日量約2万バレルから11万バレルへと拡大し、2025年には石油産業の貢献度がGDPの24%(2017年は4%)、税収の45%(同17%)に高まるとの試算もある。今回のベナン政府の決定は、財政難に直面するニジェール軍事政権にとって好ましいものだが、ベナン北部に残留するフランス軍はニジェールにとって脅威とみる向きもあり、ベナンとの国境再開は許容できない事情がある。
(藤本海香子)
(ベナン、ニジェール、中国)
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