11月の米ISM景況感指数、トランプ氏当選に伴う影響が色濃く反映(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月5日 13時35分
米国サプライマネジメント協会(ISM)は12月2日に11月の製造業景況感指数、4日にサービス業(非製造業)景況感指数をそれぞれ発表した。株高と金利高止まりの影響や、今後の関税引き上げに対する懸念など、ドナルド・トランプ次期大統領の当選に伴う影響が強く感じられる内容となっている。
製造業景況感指数は48.4と、前月から1.9ポイント上昇し、基準値の50は割り込んだものの、8月以来3カ月ぶりの上昇となり、ブルームバーグによる市場予想(47.7)を上回った。項目別では、指数の構成要素のうち特に新規受注(50.4)が8カ月ぶりに基準値を上回った。また、50は下回ったものの、生産(46.8)、雇用(48.1)、在庫(48.1)も、前月からやや改善した。業種別では、縮小と回答した業種は全体では11業種、産出額の大きい6業種(注1)では、4業種と前月から変わらなかった(注2)。
ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について、受注の増加や在庫水準の改善などに触れる一方、「選挙を終えて企業は2025年の計画を準備中で、需要は弱いままだ」とし、化学、金属製品など製造セクターに部材などを供給する基礎産業は引き続き弱く、回復にはまだ2~3カ月かかる可能性があると指摘した。企業のコメントは業種によってまちまちで、「住宅ローン金利の高さが接着剤などの主要市場の新築住宅建設関連における需要を妨げている」(化学)、「ビジネスは低迷しており、2025年前半も同様の状況になると予想している。2025年後半には需要が増加することを期待している」(輸送機器)といった、トランプ氏当選に伴う足下でのビジネス環境への影響(2024年12月3日記事参照)を指摘する声や、消費者の買い控えの指摘(食品、飲料、たばこ)などがある一方、「受注残が急激に増加している」(コンピュータ・電子製品)、「ここ数週間で受注量が増加し、勢いが増している」(電気製品)など、人工知能(AI)投資に近い業種からは肯定的なコメントが出ている。
11月の非製造業景況感指数は52.1で、基準値の50を上回ったものの、前月(56.0)から3.9ポイント減少し、市場予想の55.5も下回る予想外の低下幅となった。項目別では、ビジネス活動(53.7)、新規受注(53.7)、雇用(51.5)、供給スピード(49.5、注3)の4項目の構成要素の全てで前月から低下した。業種別では、全18業種のうち14業種が拡大、3業種が縮小と回答した(注4)。
事業者からは、ビジネスに必要なモノの価格上昇など、関税引き上げに伴う影響を懸念する声が幅広い業種から聞かれた。他方で、「ビジネス活動が活発化しているため、追加リソースが必要になっている」(金融・保険)など、トランプ氏当選以降の株式市場の好調さを反映した事業活動の拡大を報告する業種も見られた。
(注1)商務省発表の2022年第4四半期(10~12月)から2023年第3四半期(7~9月)までのGDPの数値に基づき、産出額の大きい6セクターの化学、輸送機器、食品・飲料・たばこ、コンピュータ・電子製品、一般機械、金属加工を指す。
(注2)拡大したと回答した業種は、食品・飲料・たばこ、コンピュータ・電子製品、電気製品。縮小したと回答した業種は、印刷、プラスチック・ゴム、紙、輸送機器、金属加工、家具、機械、非金属鉱物、その他製造業、一次金属。
(注3)供給スピードは、50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると供給スピードの改善を示す。
(注4)拡大したと回答した業種は、宿泊・飲食サービス、芸術・エンターテインメント・レクリエーション、ヘルスケア・社会扶助、卸売り、農林水産業、行政、金融・保険、経営・サポートサービス、小売り、運輸・倉庫、情報、専門・科学・技術サービス、建設、公共事業。縮小したと回答した業種は、鉱業、不動産、教育サービス。
(加藤翔一)
(米国)
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