米オープンAI、ロックセットを買収、企業向けアプリケーション市場での競争力強化へ（米国）

米国のオープンAIは6月21日、企業内部データの分析やリアルタイム検索に特化したスタートアップのロックセット（本社：カリフォルニア州サンマテオ）の買収を発表した。この買収により、オープンAIの製品全体のデータ取得インフラが強化されるとしている。

ロックセットは元メタのベンカット・ベンカタラマニ最高経営責任者（CEO）と、同じくメタでロックスDB（注）の開発で重要な役割を果たしたドルバ・ボルサクル最高技術責任者（CTO）らによって2016年に創立され、企業が即座にデータを取り込んで分析できるリアルタイム分析エンジンを提供してきた。同サービスは、ユーザーや、デベロッパー、企業が自社のデータをより効果的に活用し、人工知能（AI）製品を利用してより高性能なアプリケーションを構築する際に、リアルタイムの情報にアクセスすることを可能にする。同社はこれまでに複数のベンチャーキャピタル（VC）などから、総額1億1,750万ドルの資金調達を行ってきた。

この買収により、ロックセットの強みのリアルタイムデータ処理を応用し、多様なソースからのデータ処理が可能になり、最新情報が必要なアプリケーションに対し、高度なAIソリューションを提供できるようになる。複数メディアでは、金融取引やサイバーセキュリティー、マーケティングなどへの活用のほか、医療分野でもリアルタイムデータ処理により、患者のモニタリングシステムを強化し、タイムリーな介入や個別化された治療方針を提供することが可能になるという。

ロックセットは今後、オープンAIの一部として、オープンAIのデータインフラを強化するとともに、AIアプリが直面する大規模なデータベースの問題を解決する予定だという。

オープンAIの企業向けアプリケーション市場への拡大

オープンAIは6月17日に医療系スタートアップのカラーヘルスと提携を発表したばかりだ（2024年6月27日記事参照）。また、同社は5月末にも、経営コンサルタント大手のプライスウォーターハウスクーパース（PwC）と、AIを活用したコンサルティングサービスを提供するための提携を発表している。、PwCはオープンAIの最大の顧客となると同時に、オープンAIの企業向けソリューションを他の企業にも販売する初のパートナーともなっている。

（注）ロックスDBは、メタが開発したデータ管理形態で、キーと値のペアでデータを保存するデータベース。データベースのエントリをキー（識別子）とそのキーに対応する値（データ）として格納するというシンプルな構造により、高速なデータの読み取りや書き込み操作が可能になる。

（松井美樹）

（米国）