フランス下院選、左派連合が最大勢力に、極右は失速(フランス)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月9日 15時55分
フランス国民議会(下院、定数577)の選挙は、7月7日に決選投票が行われた。6月30日の第1回投票(2024年7月2日記事参照)でトップに立った極右「国民連合(RN)」は単独過半数獲得による政権交代を目指したが、エマニュエル・マクロン大統領を支持する中道の与党連合と左派連合「新民衆戦線(NFP)」が反RNで共闘し、RNは改選前の議席数を大幅に増やしたものの、第3勢力にとどまった。投票率は66.63%と、前回2022年の投票率を20ポイント以上も上回った。
内務省の発表によると、左派連合NFPの獲得議席数は182議席(注)で、最大勢力に躍進した。マクロン大統領の与党連合は165議席と、改選前(245議席)から80議席を失い、左派連合に次ぐ第2勢力に後退した。
RNは143議席(中道右派「共和党」から分裂した「極右連合」の17議席を含む)と、改選前(89議席)から大きく伸ばしたが、第1回投票後に最大300議席を獲得するとの予測からは議席数をほぼ半数に減らした。極右政権誕生に対する国民の根強い忌避感が明らかになった。「共和党」は改選前から5議席増やして66議席となり、支持基盤の強さを印象づけた。
NFPを構成する左派4党のうち、最も多くの議席数を獲得した極左「不服従のフランス(LFI)」を率いるジャン=リュック・メランション氏は同日の勝利宣言で、マクロン大統領は敗北を認め、最大勢力となった左派連合NFPに国を統治させるべきだと訴えた。その上で、マクロン政権が実施した年金制度改革の撤廃のほか、生活必需品の価格凍結、最低賃金引き上げなど、NFPが公約した政策プログラム(2024年6月20日記事参照)を2024年夏にもデクレ(政令)により施行する方針を示した。
他方、与党連合が多数派から転落する見通しとなったことを受けて、ガブリエル・アタル首相は同日、選挙後の慣例に従い、マクロン大統領に辞表を提出する意向を表明した。下院の獲得議席数はNFP、与党連合、RNのいずれも単独過半数(289議席)に到達しておらず、次期首相の任命は難航することが予想される。各種メディア報道によると、マクロン大統領は8日、パリ五輪の開催を踏まえて国の安定を確保するため、アタル首相に暫定的に首相にとどまるよう求めた。
(注)7月7日夜時点の民放TF1速報値に基づく。報道により議席数に違いがある。
(山崎あき)
(フランス)
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