10月の米ISM景況感指数、大統領選控え製造業と非製造業で状況は対照的、ハリケーンは供給スピードや価格に影響（米国）

米国サプライマネジメント協会（ISM）は11月1日に10月の製造業景況感指数、5日に10月のサービス業（非製造業）景況感指数を発表した。11月5日の大統領選挙に伴う影響は製造業と非製造業で大きな差がみられ、対照的になっている。11月はハリケーンなどの特殊要因が供給スピードの低下や仕入れ価格の押し上げにつながった。

製造業景況感指数は46.5で、前月から0.7ポイント低下、ブルームバーグによる市場予想（47.6）を下回り、7カ月連続で基準値の50を割り込んだ。項目別では、指数の構成要素のうち生産（46.2）、新規受注（47.1）、雇用（44.4）、在庫（42.6）の4項目で50を下回り、その見通しは引き続き低調だ。業種別では、縮小と回答した業種が11で、前月の13業種から減少し、産出額の大きい6業種（注1）でも、4業種が縮小と、前月の5業種から減少した（注2）。また、同指数の構成要素以外では、エネルギーと輸送費の上昇が原因となり、仕入れ価格（54.8）が前月（48.3）から大きく上昇した。

ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について「民主・共和両党が提案している財政政策を踏まえた連邦準備制度理事会（FRB）の金融政策の方向性に対する懸念から、企業は設備・在庫投資に消極的で、需要は引き続き低迷している」と述べた。前月までのレポートでも、大統領選に伴う政策変更リスクや高金利に伴う需要の押し下げが指摘されていたが、今回のコメントは企業の懸念がより長引く可能性を示唆している。フィオレ会長はブルームバーグの取材に対し、「おそらく年末までこの減速期が続き、（2025年）1月か2月までは成長しないと思う」と述べた（ブルームバーグ11月1日）。

もっとも、今回の結果はこうした政策懸念に加え、ハリケーンやボーイングと東海岸港湾のストの影響に言及する企業（石油・石炭製品、紙製品）もみられ、これらの特殊要因も一部反映されているもようだ。供給スピードの低下（52.0）（注3）や前述の仕入れ価格の上昇などはこれら特殊要因が影響している可能性もある。

一方、10月の非製造業景況感指数は56.0と、前月（54.9）から2カ月連続で大きく上昇し、市場予想の53.8を上回った。項目別では、ビジネス活動（57.2）、新規受注（57.4）、雇用（53.0）、供給スピード（56.4）の4項目で50を上回っている。業種別では、全18業種のうち14業種が拡大、2業種が縮小と回答した（注4）。ISMサービス業調査委員会のスティーブ・ミラー会長は「政治的な不確実性に対する懸念は前月よりも広がっている」とコメントしているが、設備投資の動向に大きな影響を受ける製造業に比べ、その影響は小さいもようで、企業コメントでも、先行きを含めて好調さを示すものが目立つ。なお、ハリケーンの影響は、複数の企業が供給遅延につながった（ヘルスケア、不動産）とコメントしており、供給スピードや仕入れ価格（58.1）に関しては、製造業と同様に指数の上昇圧力になったとみられる。

（注1）商務省発表の2022年第4四半期（10～12月）から2023年第3四半期（7～9月）までのGDPの数値に基づき、産出額の大きい6セクターの化学、輸送機器、食品・飲料・たばこ、コンピュータ・電子製品、一般機械、金属加工を指す。

（注2）拡大したと回答した業種は、アパレル・皮革、食品・飲料・たばこ、石油・石炭、コンピュータ・電子製品、その他製造業。縮小したと回答した業種は、繊維、印刷、輸送機器、化学、電気製品、機械、一次金属、非金属鉱物、プラスチック・ゴム、金属加工、紙。

（注3）供給スピードは、50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると供給スピードの改善を示す。

（注4）拡大したと回答した業種は、小売り、情報、運輸・倉庫、宿泊・飲食サービス、金融・保険、建設、鉱業、公益サービス、公共事業、不動産、教育サービス、専門・科学・技術サービス、ヘルスケア、卸売り。縮小したと回答した業種は、経営・サポートサービス、その他サービス。

（加藤翔一）

（米国）