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英政府、2つのCCUSクラスターに最大217億ポンドの支援発表(英国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月11日 10時40分

英国政府は10月4日、2つの二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)クラスターに対して、25年間で最大217億ポンド(約4兆2,315億円、1ポンド=約195円)の拠出を発表した。支援の対象は既に政府支援対象のトラック1として選定されていたCCUS産業クラスターの、イングランド北東部ティーズサイドのイースト・コースト・クラスターと、イングランド北西部マージーサイド(およびウェールズ北部)のハイネット(注1)。

炭素回収とCCUSを活用したブルー水素(注2)プロジェクトにより、直接的に4,000人の雇用を創出、長期的には5万人の雇用を支え、両地域に80億ポンドの民間投資誘致を見込む。さらに年間850万トンのCO2削減に貢献する。CCUSは2050年までに英国経済に年間約50億ポンドの利益をもたらすとされ、今回の支援は、英国がCCUSに対して前向きという投資家への明確なシグナルだとした。

政府諮問機関の気候変動委員会(CCC)は、CCUSが英国の重工業の脱炭素化に重要な役割を果たし、2050年までのネットゼロ目標達成に必要不可欠だとした。国際エネルギー機関(IEA)や国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)も、セメントや鉄鋼など重工業の脱炭素化の重要な手段としてCCUSを評価しているとした。

政府は、グリーン産業への投資を通じて良質な雇用の創出を目指す。9月30日には、英国最後の石炭火力発電所(2024年10月10日記事参照)とインドの大手製鉄タタ・スチールの高炉が廃止されたところで、業界や労働組合は今回の発表を歓迎する声明を発表した。エンジニアや技術専門家などが加盟する労働組合プロスペクトのマイク・クランシー書記長は「今後段階的に廃止される炭素集約型産業の立地地域にCCUSを導入することは、地域の産業基盤を支え、将来の雇用と技術力を確保する上で必要不可欠」とコメントした。

(注1)政府による支援対象となるCCUS産業クラスターについて、2020年代中期までに開発するトラック1として、2021年10月にイースト・コースト・クラスターとハイネットを選定(ジェトロの2022年11月29日調査レポート2023年3月7日調査レポート参照)。2023年7月には、2030年までに開発するトラック2として、スコットランド北東部のエイコーン・プロジェクトと、イングランド北東部ハンバーのバイキング・プロジェクトの選定を発表した(2023年8月4日記事参照)。

(注2)CO2回収・貯留(CCS)やCCUSと組み合わせて化石燃料から製造する水素。

(奈良陽一)

(英国)

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