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米FRB、大手金融機関31行の財務健全性審査を実施、全行が基準クリア(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月28日 13時30分

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月26日、大手銀行31行を対象とした財務健全性審査(ストレステスト)の実施結果を発表した。前年(2023年6月29日記事参照)に続いて、全行がFRBの定めた基準をクリアした。

ストレステストは、2008年に起きたリーマン・ショックを契機に導入された。金融危機など深刻な不況に陥った際に、金融機関がそれに耐え得るだけの資本などを備えているかを点検する。前回同様、資産総額1,000億ドル以上の大手行が対象で、2024年は31行が対象(注)となった。

今回実施したストレステストのシナリオは前年とほぼ同様の内容で、失業率は現状から6.3ポイント上昇、ピーク時には10%に達し、資産価格は大幅に下落(株価は55%下落、住宅価格や商業用不動産は36~40%下落)すると想定した。

前年のストレステストと同様、厳しい想定の下、2024年第1四半期(1~3月)~2026年第1四半期までの9四半期に、各金融機関の損失や収益、資本がどのように変化するかのシミュレーションを行った。その結果、損失総額は31行で6,840億ドルに達し、このうち貸し倒れ損失が5,710億ドルと、損失総額の83%を占めた。内訳では、クレジットカードローンが約1,750億ドル(26%)、商工ローンが約1,420億ドル(21%)、商業用不動産が約770億ドル(11%)などとなっている。

結果として、自己資本比率(普通株などティア1資本比率)は2023年第4四半期(10~12月)の実績値(12.7%)から2.8ポイント低下の9.9%まで下落するとした。前年のストレステストでの低下幅は2.5ポイントで、下落幅は拡大しているものの、FRBが定める最低規制比率の4.5%の2倍以上と十分な比率をなお保っている。FRBは自己資本比率の低下幅の拡大要因として、(1)クレジットカードローン残高が大幅に増加し、延滞率も上昇、(2)企業向けポートフォリオで投資適格債の比率が減少、(3)対象行でこのところ金利以外の収益が減少しており、損失を相殺する能力が低下という3つを挙げている。なお、商業用不動産に関しては、前回と比べてオフィス部門に対する損失は増加するものの、ホテルや商業施設向けの損失が減少しているため、全体では今回の損失幅の拡大には寄与していないとしている。

今回の結果について、FRBで銀行監督を担当するマイケル・バー副議長は声明で「大手銀行は極めて高ストレスのシナリオに耐え、最低資本比率を満たすのに十分な資本を持っていることが示された」と述べた。他方で、今回損失が増加したことを踏まえ、必要な資本バッファーをより大きくする必要があることや、ヘッジファンドに対する銀行のエクスポージャーを引き続き調査していく必要があることなど、銀行システムの健全性の向上に向けてさらに取り組んでいく姿勢を示した。

(注)前回は23行が対象。対象行はその資産規模や取引形態に応じて、4つのカテゴリーに分類されている。カテゴリー4に分類された総資産1,000億ドル以上2,500億ドル未満の銀行については、ストレステストは2年に1回の実施が義務付けられている(そのほかのカテゴリーは毎年実施)。2024年はカテゴリー4で審査の対象年となる銀行が12行と、2023年(4行)よりも多かったため、対象行が増加している。

(加藤翔一)

(米国)

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