米ボーイングのストライキ終結せず、事態打開は不透明に(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月25日 16時25分
米国ボーイングの労働組合は10月23日、同社が提案した新たな契約案の可否を問う投票を行った。組合のストライキは9月に開始され、長期化している。同社の提案は、今後4年間にわたる35%の賃上げ、企業型確定拠出年金401kプランへのボーイングの拠出増など、9月の提案より改善したものの、労働者の64%が反対し、ストライキが継続されることとなった。
ボーイングにとって16年ぶりのストライキは、2024年9月13日に始まった。同社のワシントン州の工場に勤務する約3万3,000人の従業員を代表する労働組合国際機械工・航空宇宙産業労働組合(IAM)は、今後4年間で40%の賃上げに加え、特に2014年に廃止された確定給付企業年金制度の復活などを求めている。
同社と組合は交渉を続けてきたが、10月8日に同社のステファニー・ポープ最高執行責任者(COO)兼ボーイングコマーシャルエアプレーンズ最高経営責任者(CEO)が交渉の難航を発表。10月11日には、全従業員の10%にあたる1万7,000人の人員削減と50億ドルの費用計上計画に加え、767型の2027年中の製造終了、777X型の納期遅れを発表した。
10月14日には、ジュリー・スー米国労働長官代行が両者を仲介し、ストライキの沈静化を目的にボーイング本社があるワシントン州シアトルに入り、ボーイング社・組合の両者と直接面談を行った。
その後、10月19日に同社から新たな契約案が提示され、労働組合も「スー労働長官代行の支援により、交渉による提案とストライキの終結に向けた解決策が出され、組合員が検討するに値する」と評価し、労働者による投票の実施を発表していた。
業績は低迷、事態の打開はいつか
ボーイングは、2024年1月にアラスカ航空が運航していた同社の主力機である「737MAX9」の機内の側壁が吹き飛んだ事故後の対応に伴う製造停止や設計変更対応、777X型の製造遅れなどにより納期が遅れ、業績が低迷している(2024年4月2日記事参照)。10月22日に発表された2024年第3四半期(7~9月)決算では、売上高178億ドルに対し、純損失61億7,400万ドルを計上。民間航空機5,400機以上、金額にして511億ドルの受注残があり、10月15日にはバンク・オブ・アメリカやシティバンクなどから約100億ドルの調達を行っており、財務状況は芳しくない。
「737MAX9」の事故後、2024年8月に就任した同社のケリー・オルトバーグCEOは、投票前の10月23日未明、「企業文化の抜本的な改革、事業の安定化などを図り、変革しなければならない」と全従業員に向けて訴えていた。否決の結果を受け、ボーイング社は「投票結果に失望している」と述べた(CNN10月27日)。
(芦崎暢)
(米国)
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