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スペインのサンチェス首相、EUの中国製BEV追加関税に「再考」提言(スペイン、中国、EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月13日 15時50分

スペインのペドロ・サンチェス首相は9月11日、訪問中の中国で、欧州委員会が検討している中国製バッテリー式電気自動車(BEV)に対する相殺関税措置(2024年8月22日記事参照)について、スペインの立場を「再考中」だと述べた。欧州委が中国製BEVに対する反補助金調査を開始した後、中国側はEU産豚肉に対するアンチダンピング(AD)調査を実施すると発表した(2024年6月20日記事参照)。スペインはEU最大の対中豚肉輸出国として、EUと中国の間で板挟みになっている。

サンチェス首相は、2023年3月から1年半ぶりに中国を訪問。習近平国家主席、李強首相、趙楽際・全国人民代表常務委員長らと会談した。スペイン・中国経済交流フォーラムでは、スペインでの電気自動車(EV)生産を検討する上海汽車集団(SAIC)などの自動車メーカー幹部と会合した。

スペインはグリーン産業やイノベーション分野における中国との関係深化を重視しており、今回、サービス・デジタル貿易分野での協力覚書や、貿易投資における対話協力メカニズム覚書などが締結された。また、中国の再生可能エネルギー開発大手エンビジョン・グループ傘下のグリーン水素製造企業とスペイン産業・観光省との間で、投資額10億ドル規模の電解槽製造工場の建設を主導することで合意した。

今回の訪問は、EUが中国製BEVに対する相殺関税措置を暫定発動(2024年7月8日記事参照)した状況下で行われた。サンチェス首相は習国家主席との会談において、地政学的情勢やグローバル経済が複雑化する中、中国との関係を強化するとともに、多国間の枠組みの下で対話と協議に基づき相違点を解決することが重要であると指摘。スペインはすべての当事者にとって有益な解決策を模索すると述べた。

また、訪中総括の記者会見では、中国当局に対し、中国がBEVとは関係のない豚肉への制裁を検討していることに驚きを表明し、通商戦争は誰の得にもならないとして、EUとの橋渡しを続けていく意思を示したと明かした。中国製BEVへの相殺関税措置に対する考えを問われると、「EU加盟国と欧州委はこれを再考する必要がある。スペインは、中国と欧州委の間で解決策と妥協点を見いだしていく。従って、私はもちろん私たちの立場を再考している」と述べた。

相殺関税措置は、EU加盟国による採決を経て、10月末までに実施規則がEU官報に掲載される予定。措置を支持していたスペインが立場を軌道修正したことは、交渉や意思決定にも影響を及ぼす可能性があるが、反対しているのはドイツなど少数で、措置を否決するのは難しいとみられる。

(伊藤裕規子、江里口理子)

(スペイン、中国、EU)

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