米商務省、輸出管理規則上の自己開示と罰則を改定する最終規則を発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月13日 14時10分
米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月12日、輸出管理規則(EAR)上の自主的な自己開示(VSD)、および罰則に関するガイドラインを改定する最終規則を発表した。正式には9月16日に官報で公示し、同日から有効となる。
発表によると、今回の最終規則の主な目的は2つある。1つは、重大ではない違反事例の効率的な解決を目的としたVSD奨励方針を正式にEARに組み込むこと。もう1つは、BISの罰則ガイドラインを改定し、輸出管理法法令執行課(OEE)が違反状況に合わせて、罰則の重さをより適切に反映できるようにすること、となっている。BISは2022年から、輸出管理の執行強化のためのガイダンスなどを断続的に制定、更新してきており(注1)、今回正式にEARの下で、規制する。
BISが発表した、VSDに関する主な変更点は次のとおり。
軽微な違反に対する VSD は、不問状(no-action letter)または警告書(warning letter)によって60日以内に解決されること、重大な違反の可能性がある場合は、OEE の調査官と商務省首席法務官室の弁護士を任命するなど、デュアルトラック手続きを明確にする。
複数の軽微な違反は、四半期ごとにまとめての提出を推奨するなど、VSDの提出プロセスを簡素化する。
OEEが行政処分を決定する際、重大な違反を公表しないという企業の意図的な決定を、罰則の加重要因とみなすことを明確にする。
VSDを提出する当事者だけでなく、いかなる者も、違反が発生したことをOEEに通知でき、その後、当局に対して、違法に輸出した品目を米国に戻す許可を求められることを明確にする。
また、BISが発表した罰則ガイドラインの主な変更点は次のとおり。
個々の違反の状況を適切に反映した罰則を決定するため、OEEの裁量を拡大しつつ、OEEが罰則ガイドラインに定められた要因を適切に加味して行政処分を決定できるよう、法で定められた範囲内で罰則を調整する能力を維持する。
悪質な行為ではないが、警告書や不問状では解決できない事案に対する執行措置として、罰金以外の解決策を制定する。
加重要因C(注2)を改正し、BISが違反による米国の外交政策への潜在的影響を評価する際、人権侵害を具体的な考慮要素として含める。
一般的要因H(注3)を改正し、他者による違反の開示を、BISの執行に対する例外的な協力として明確にする。
BISはまた、司法省で要職を務めた経験のあるラジ・パレク氏を、初の首席企業取締官に任命したと発表した。同氏は司法省などとの窓口として、重要な企業調査を行う。今回の任命は、BISによる輸出管理の執行強化に対するさらなるコミットメントだとしている。BISは近年、輸出管理の執行強化のため、司法省との連携を強化している(2024年2月15日記事参照)。
BISはそのほか、輸出管理の執行強化およびVSDを奨励するための政策方針を示した2022年以降の12カ月間は、それ以前の12カ月間と比較して、VSDの件数が約30%増加したとも発表した。
(注1)過去の輸出管理の執行や罰則に関するガイダンスは、2022年7月4日記事、2023年4月20日記事、2023年7月27日記事、2024年1月25日記事、2024年8月16日記事を参照。
(注2)EAR違反に対する罰則を決定する際、罰則が加重される要因。「加重要因(Aggravating Factor)」のCは、輸出管理の目的に対する実際または潜在的な危害を規定している。
(注3)EAR違反に対する罰則を決定する際、罰則を緩和する要因にも厳しくする要因にもなり得る要因。「一般的要因(General Factors)」のHは、BISに対する例外的な協力が規定されている。
(赤平大寿)
(米国)
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