アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)セミナーを開催、AfCFTA事務局などが登壇(アフリカ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月4日 0時25分
ジェトロ、国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)、国連工業開発機関(UNIDO)の4機関は11月21日、「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)セミナー」をオンライン開催した。AfCFTAの最新の取り組み状況と今後の展望などが議論された。
アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)は、アフリカ域内での物品関税撤廃、サービス貿易や投資の自由化、競争政策、知的財産などを盛り込んだ、アフリカ連合(AU)主導の自由貿易協定(FTA)であり、アフリカの域内貿易拡大と工業化につながることが期待されている(2023年5月11日付地域・分析レポート参照)。ジェトロが2023度に実施したアフリカ進出日系企業に対するアンケート調査では、回答企業の56%がAfCFTAの利用を検討していると回答している〔2023年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)(2023年12月)参照〕。
セミナー冒頭の基調講演では、AfCFTA事務局(注1)のソテツィ・マコン(Tsotetsi Makong)氏が登壇し、「AfCFTAは、AUのアジェンダ2063(注2)において最も注力される要素の1つであり、法制度に裏付けされた輸送の統合から域内貿易を促進し、アフリカが結束した意思表示をはじめる契機でもある」と説明した。その上で、各国が関税譲許表の準備を進める中、2022年に開始した「ガイデッド・トレード・イニシアチブ(2022年10月7日記事参照)」はAfCFTAのルール体現化に貢献していると指摘した。続いて、UNDPのイフィ・オゴ(Ify Ogo)氏は、産業ごとのAfCFTA運用のポテンシャルについて、次のように示した。
自動車・関連機器:ガーナ、ルワンダ、南アフリカ共和国がハブとして浮上中。
ヘルスケア・医薬品:現状90%以上が域外輸入。アフリカ現地生産に可能性。
加工包装機械:南ア、エジプト、ナイジェリアがハブ。アフリカで高需要が続く。
食品加工:アフリカ域内貿易の大半を食品が占めており、フードロス分野に可能性。
JICAガーナ事務所の金子和代氏は、2022年12月のJICAとAfCFTA事務局の業務連携協定(MoC)締結や2024年7月のAIDA-AfCFTAインパクトアセスメントガイド発表などを紹介した。4つの連携分野(1.貿易円滑化と回廊開発、2.産業化と地域バリューチェーン構築、3.ASEAN/日本の知識共有、4.能力強化とアドボカシー)において、AfCFTAの運用促進に貢献していくとした。
パネルディスカッションでは、AfCFTAの利用について議論され、タンザニアでサイザル麻を加工し、欧州、アジア、アフリカ(ガーナ、ナイジェリア、モロッコ)に輸出するAIA Limited(注3)のハピネス・ニティ氏らが登壇した。ハピネス氏はAfCFTAの運用について、「当社は西アフリカと北アフリカに輸出しているが、サイザル麻が中所得層にも購入されるようになり需要が増える中で、AfCFTAはより大きな市場へのアクセスを可能にする。一方で、船籍の遅れなど港のロジスティックに混乱が多く、商品の到着が3カ月も遅れたこともある。政府と改善に向け協議している」と述べた。
また、AfCFTA事務局のマコン氏は、運用開始時期について質問を受け、「アフリカ大陸には後発開発途上国と開発途上国が隣接するため、関税撤廃までの期間について同意形成が難航している」とし、東アフリカ共同体(EAC)と南部アフリカ関税同盟(SACU)などが共同体・同盟のくくりで譲許表をオファーし、一部加盟国の後発開発途上国ステータスに合わせて撤廃期間を10年と主張するなど、議論に時間を要していると説明した(2023年5月15日付地域・分析レポート参照)。
(注1)AfCFTA事務局は、ガーナ政府とAUとの合意のもと、2020年8月にアクラに設置された(2020年8月21日記事参照)。
(注2)アジェンダ2063とは、AUが2013年に提唱したアフリカ大陸全体の長期開発ビジョン。
(注3)AIA Limitedは、2023年にタンザニア経済貿易省から「AfCFTA輸出指定企業」に認定され、タンザニアで初めてAfCFTAの下で輸出を行った企業。
(吉川菜穂)
(アフリカ)
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