米主要港、6月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比3.6%増、米東海岸労使交渉の行方に懸念高まる(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月13日 11時40分
全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」(8月8日)によると、6月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前月比3.6%増、前年同月比で17.7%増の216万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった。また、今後の見通しについては、7月時点の予想(2024年7月16日記事参照)から全ての月において上方修正され、7月は前年同月比22.1%増の234万TEU(7月時点の予測:15.5%増の221万TEU)と、2022年5月(240万TEU)以来の高水準になると推定。また、8月も19.2%増の234万TEU(同13.5%増の222万TEU)、9月は6.5%増の216万TEU(同3.5%増の210万TEU)、10月は1.7%増の209万TEU(同0.5%減の205万TEU)、11月は4.4%増の198万TEU(同3.5%増の196万TEU)になると見込んでいる。
しかし、こうした増加がそのまま小売業の好調さを意味しているわけではなさそうだ。発表の中で、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は、主要港の取扱量が増加している要因について「(米国東海岸およびメキシコ湾岸の港湾労働者との)労働協約が停滞しているため、小売業者は東海岸とメキシコ湾岸の港でストライキが起こる可能性を懸念している」と述べたほか、ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏は、サプライチェーン上で複数のリスクが漂う中、「輸入業者は在庫を増やし続けており、潜在的な労働力の混乱に備え、貨物を西海岸に移している(注2)」と述べ、むしろ先行き不安を理由とした在庫の積み増しが背景になっている可能性を指摘している。実際に、7月の雇用統計(2024年8月5日記事参照)でも、小売業などが比較的低調に推移する中で、倉庫業は大きな伸びを示しており、こうした在庫の積み増しが速いペースで進んでいることが示唆されている。
国際港湾労働者協会(ILA)と米国海運連合(USMX、注3)の間で結ばれている現行の労働協約は9月30日に満了を迎える。両者は、6月から基本協約交渉を開始する予定だったが、ILA側は、組合員の労働力を使わずに、港湾ターミナルでトラックを処理するために自動化技術が導入されたことが現行の労働契約に違反していると主張し、労使交渉が中断している(2024年7月16日記事参照)。ILAの発表(8月3日)によると、9月4~5日に開催予定の会合では、同組合がUSMXに最終的な契約条件を提示した上で、現行の契約期限内までに合意に達しなければ、ストライキが発生する可能性が示唆されている。
両者の労働契約は、米国東海岸とメキシコ湾岸の36港を対象としており、これらの港湾は、米国へ入港する単月ベースのコンテナ取扱量の最大56%を取り扱っている。小売業者や製造業者を代表する業界団体は、労使交渉の再開に向けて政府の関与を求めているが、現時点では進展はみられていない。実際にストライキが発生した場合には、11月5日の米大統領選挙のわずか数週間前に行われることもあり、小売業界にとっては1年の中でも最も重要な11月後半から始まるホリデーシーズンの繁忙期を目前に、サプライチェーンに重大な影響を及ぼす可能性が高まっている(米海洋産業専門誌「マリタイム・エグゼクティブ」8月5日)。
(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。
(注2)NRFは、この変化により、追跡している貨物に占める西海岸の割合は、ここ 3 年以上で初めて50%を超えたと試算している。また、こうした西海岸へのシフトに伴い、アジアの港湾における設備不足、混雑が引き起こされているとの報告もなされている。
(注3)米国東海岸およびメキシコ湾岸の港湾労働の雇用主を代表する。
(樫葉さくら)
(米国)
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