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欧州委、46億ユーロの域内ネットゼロ産業向け助成金の公募発表(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月10日 0時30分

欧州委員会は12月3日、温室効果ガス(GHG)排出ゼロに貢献する技術(ネットゼロ技術)の推進に向け、合計46億ユーロの助成金の公募を発表した(プレスリリース)。

1件目は24億ユーロの公募で、脱炭素化プロジェクトと再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵、ヒートポンプ、水素関連の部品製造が対象となる。2件目は10億ユーロの公募で、電気自動車(EV)向けバッテリーの製造が対象となる。欧州委は2件目に関連し、欧州投資銀行(EIB)とのパートナーシップも発表し、2億ユーロの融資保証を別途提供する。

また、グリーン水素の域内生産を支援する欧州水素銀行(2024年5月8日記事参照)の第2回競争入札の募集も開始する。海運分野のオフテイカー(引き取り手)向けプロジェクトに2億ユーロが、オフテイカーの産業を問わないプロジェクトに10億ユーロが割り当てられる。加えて、スペイン、リトアニア、オーストリアが第2回競争入札を利用し、合計最大8億3,600万ユーロの国家補助を実施する。

今回はいずれの募集でも選定に強靭(きょうじん)性(レジリエンス)基準を新たに導入する。強靭性基準とは、供給先の多角化と域内産業の保護を目的としたもので、ネットゼロ産業法(2024年2月14日記事参照)で同様の基準が既に導入されている。2件目の公募については、中国製部品のシェアが高いことから、中国製部品の割合が低い場合に加点する。2期目となる欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は公共調達で域内製品を優遇する方針を示している。

ノースボルトの破綻受け、成果問われるEUの産業支援

EUは、グリーン・ディール産業計画(2023年12月15日付地域・分析レポート参照)を策定し、域内ネットゼロ産業の育成を加速されているが、現時点で目立った成果は上がっていない。特にバッテリーは他のネットゼロ技術に先駆け、「欧州バッテリー同盟(EBA)」の立ち上げや、「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の承認(2021年1月28日記事参照)が行われるなど、産業支援が進んでいた。

しかし、EUや加盟国から多額の支援を受け(2024年3月27日記事参照)、域内でのEV向けバッテリー製造の中心になると期待されていたスウェーデンのノースボルトが11月、米国連邦破産法第11章の適用を申請し、域内ネットゼロ産業を巡る環境は厳しい状況が続いている。EU支援予算の拡大や国家補助の在り方を巡る議論が2025年以降に本格化する中で、EUの今後の財政支援の動きが注目される。

(吉沼啓介)

(EU)

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