チュニジアで外国自動車部品企業の拡張投資が相次ぐ(チュニジア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月20日 0時45分
チュニジア投資庁(TIA)の発表によると、米国の自動車電子部品企業ビステオン(注1)は9月11日、生産拠点の拡張や、技術センターの新規設立を柱とする、チュニジアへの投資戦略を発表した。具体的には、3,000万チュニジア・ディナール(約14億1,000万円、TD、1TD=約47円)以上の追加投資を行い、アフリカで唯一となる同社のチュニジア工場に高度なマグネシウム注入技術を導入する計画だ。さらに、インテリアデザイン技術、サイバーセキュリティー、コネクテッドカーに特化した自動車分野の最先端技術を導入した技術センターを新たに設立し、2026年までに350人のエンジニアを雇用する予定だ。なお、同社は2024年4月12日にも、5,000万ドルを投じて、首都チュニスの南西25キロメートルに位置するビル・エルベイに電子部品を生産する新部門の工場を設立し、追加投資を行ったばかりだ。
一方、チュニジアに3カ所の製造拠点を擁する住友電装は9月9日、南部モナスティール・テクノポールにある第1工場の拡張により、今後、500人を新規雇用して雇用数を2,400人まで引き上げ、2027年までには5,000人まで増加させる目標、とTIAが発表した。
チュニジア外国投資促進庁(FIPA)が8月中旬に公表した報告書によると、外国企業によるチュニジアへの直接投資は2024年上半期末時点で13億8,890万TDに達し、前年同期比で13.8%増、2022 年同期比で34.2%増を記録した。チュニジアは、カイス・サイード大統領の統治手法に伴う政治の不安定さ(2024年9月6日記事参照)と、経済の伸び悩み(注2)に直面する一方、外国企業、特に製造業による対チュニジア直接投資は拡張のための再投資を中心に上向きに推移している。その要因として、2005年に現地に進出したフランス自動車・航空機用電気部品メーカーのラクロワ・エレクトロニクスは、チュニジアへの投資の利点を、(1)人件費と生産コストが比較的低いこと、(2)欧州との地理的な近さと自由貿易協定(FTA、注3)、(3)自動車部品製造の熟練労働力の存在、(4)政府の特に自動車などの戦略的分野における外国投資誘致のための優遇政策の存在、(5)産業インフラの充実、などの要素を挙げており、チュニジアは依然として製造業の投資先として魅力的な国となっている、と分析している。
(注1)ビステオンは、自動車用の空調システム、照明、電子部品、およびデジタル・ダッシュボードの設計と製造などを専門とする。米国ミシガン州バンビューレンに本社を構え、世界17カ国に拠点を置き、1万人の従業員を擁している。1991年からチュニジアに進出し、自動車用電子部品を製造し、従業員350人を擁する輸出型企業。
(注2)2024年第1四半期のGDP成長率は前年同期比で0.2%。
(注3)EU-チュニジア連合協定が1995年に署名され、2008年には工業製品に関するEUとの自由貿易協定(FTA)が発効。
(渡辺智子)
(チュニジア)
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