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元米連邦議会議員らがトランプ、ハリス両陣営の政策の財政影響試算を発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月8日 14時55分

添付資料PDFファイル(281 KB)

米国連邦議会上下院の元議員らが超党派で構成する「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」は10月7日、大統領選挙(11月5日)の候補者である共和党のドナルド・トランプ前大統領、民主党のカマラ・ハリス副大統領の政策に伴う財政上の影響について独自の試算結果を発表した。

試算はこれまで両陣営が発表している政策綱領や、選挙ウェブサイト上の政策などを対象としているが、詳細が明らかでないものもあるため、財政的コストを高位・中位・低位の3つのシナリオに分けている。中位シナリオでは、今後10年間(2026~2035年)で、次のようになる。

1. トランプ氏の政策:トランプ減税の延長などで歳出が10兆2,000億ドル増、関税引き上げなどで歳入が3兆7,000億ドル増、利払い費が1兆ドル増になる結果、財政赤字を7兆5,000億ドル増加させる(添付資料表1参照)。結果、2035年の累積債務残高はGDP比142%に上昇。
2. ハリス氏の政策:児童扶養税額控除の拡充などで歳出が7兆2,500億ドル増、法人税引き上げなどで歳入が4兆2,500億ドル増、利払い費が5,000億ドル増になる結果、財政赤字を3兆5,000億ドル増加させる(添付資料表2参照)。結果、2035年の累積債務残高はGDP比133%に上昇。

バイデン政権が2024年3月に示した2025年度予算教書(2024年3月12日記事参照)では、2035年の累積債務残高はGDP比125%と試算されており、いずれの候補の下でも現行より財政が悪化する結果となっている。高位シナリオでは、トランプ氏の下では財政赤字が約15兆ドル増で累積債務残高はGDP比160%に、ハリス氏の下では財政赤字が約8兆ドル増で累積債務残高がGDP比144%に拡大する。低位シナリオでは、トランプ氏の下では財政赤字が1兆4,500億ドル増で累積債務残高はGDP比128%に、ハリス氏の下では財政赤字のさらなる増加は回避され、累積債務残高も現行シナリオと同レベルとなる。

CRFBは、「最良のシナリオでも、どちらの候補者の計画も、債務を減少させ米国をより安全で持続可能な財政の未来へ導くには不十分だろう。今後、政策立案者、特に大統領は、大幅な赤字削減を主要な焦点と優先事項にすべきだ」と述べ、財政支出の拡大に警鐘を鳴らした。これに対し、ハリス陣営からは「2025年度予算教書において今後10年間で3兆ドルの財政赤字の削減を提示している(2024年3月14日記事参照)」、トランプ陣営からは「自らの経済政策が米国経済に与える影響を過小評価している」との反論が出ている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙10月7日)。

もっとも、両陣営が示しているこれらの財政政策は、個別の歳出・歳入に関する事項はもとより、許容される財政赤字幅についても議会次第の面が強い。2025年1月で期限を迎える財政責任法の後継スキームの議論は2024年11月5日の選挙後に開始される予定で、その際の議会構成により、実際に執行できる財政政策の幅は大きく左右されると見込まれる。

(加藤翔一)

(米国)

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