米地方裁判所、学生ローン減免に係る主要な措置に対して差し止め命令(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月26日 11時50分
米国のミズーリ州地方裁判所およびカンザス州地方裁判所は6月24日、価値ある教育への貯蓄(SAVE)プラン(2023年9月12日記事参照)の一部に関して、仮差し止め命令を下した。これに伴って、バイデン米政権は当面の間、SAVEプランに基づくさらなる負担軽減措置を実施することが不可能となった。
ミズーリ州地方裁判所が下した仮差し止め命令の対象は、SAVEプランに基づくさらなる学生ローン免除に関する部分だ。ミズーリ州ほか6州(注1)が、「米国民に4,750億ドルもの負担を課すSAVEプランは、2023年6月に連邦最高裁により差し止められた学生ローン返済免除(2022年8月25日記事参照)と同様に、米国民の同意なしに抜本的で費用のかかる政策変更を押し付けるものだ」としてSAVEプランの最終規則全体の差し止めを求めていたが、今回、裁判所が仮差し止めを命じたのは学生ローン免除に関する規定のみ。本命令では、利率の削減や月々に決められた返済額の範囲では支払い切れない利息分の支払い免除など、SAVEプランの他の条項については引き続き有効と判断されている。本命令は即時発効される。
他方、カンザス州ほか10州(注2)による同様の訴えを審理していたカンザス州地方裁判所が下した仮差し止め命令の対象は、7月1日から最終規則が発効予定だった利率の削減(10%から5%に半減)に関する規定や、残債免除までの期間の短縮に関する規定などに関する部分だ。バイデン政権は、SAVEプランの規定は1965年高等教育法に基づく法的にも認められたものと主張していたが、裁判所はこれらの規定が議会によって過去に実施されたことのない規模であることなどを理由として、同法により議会から授権された範囲に収まっているとは言えないとし、政権側の主張を退けた。ただし、こちらもSAVEプランの最終規則全体の差し止めではなく、既に最終規則が発効し、措置されたものについては差し止めの対象とはしていない。また、本命令に関しては、その発効日を6月30日としており、控訴可能期間が設けられている。
両裁判所による個々の判断はいずれも既に履行済みの措置を覆すものではなく、SAVEプラン全体を否定するものでもない。しかし、それぞれが異なる範囲を差し止め対象としたため、結果的にSAVEプランに基づいて今後計画されていた主要な措置が当面の間、実施できない状態となった。ホワイトハウス(6月24日)および教育省(25日)は声明を発出し、両判決に強く反対するとともに、SAVEプランを引き続き擁護していく姿勢を強調した。数日中に控訴するとみられる(フォーブス6月25日)。本件に関する裁判は今後も続くが、高等教育へのアクセスを容易にすることを、11月の大統領選挙に向けて若年層への支持拡大の1つの重要な取り組みとしてきたバイデン政権にとっては、今回の司法判断は大きな痛手となりそうだ。
(注1)アーカンソー、フロリダ、ジョージア、ノースダコタ、オハイオ、オクラホマの6州。
(注2)アラバマ、アラスカ、アイダホ、アイオワ、ルイジアナ、モンタナ、ネブラスカ、サウスカロライナ、テキサス、ユタの10州。
(加藤翔一)
(米国)
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