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最高裁、Xの国内サービス停止命令を承認(ブラジル)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月4日 14時30分

ブラジル連邦最高裁判所(STF)は9月2日、アレシャンドレ・デ・モラエス判事によるX(旧Twitter)のブラジル国内でのサービス停止命令を第一小法廷において承認した(注1)。モラエス判事は8月30日、通告12404号に基づいてXが司法妨害を続けているとして、アップルやグーグルなどの企業に対し、Xアプリの利用を不可能にするよう命じていた。

この命令を受けて、ブラジルでは現在、Xへのアクセスがブロックされており、ユーザーはVPN(注2)などを使用しない限り、Xを利用できなくなっている。VPNなどを利用してXにアクセスするユーザーに対しては、1日当たり5万レアル(約130万円、1レアル=約26円)の罰金を科すとしている。

ブラジルにおけるXは、2022年の大統領選挙以降、フェイクニュースやヘイトスピーチの温床となっているとの批判を受けてきた。最高裁はXに対し、特定のアカウントのブロックや違法コンテンツの削除などを繰り返し命じてきたが、Xを保有する米国実業家のイーロン・マスク氏は裁判所の命令に従わなかった。

今回のXのサービス停止は、ブラジルにおける言論の自由に大きな影響を与える可能性がある。Xは、ブラジルで最も人気のあるソーシャルメディア・プラットフォームの1つであり、市場調査会社E marketerの調査によると、2024年のブラジルにおける月間アクティブユーザー数は約4,050万人と推定される。多くの市民が今回のサービス停止により、重要な情報源の1つを失うことになる。

なお、ブラジル政府は今後、ソーシャルメディア企業に対し、より厳格な規制を課す可能性がある。政府は、フェイクニュース対策法案(2020年法案2630号)を議会に提出しており、上院で可決され、現在、下院での審議待ちとなっている。この法案が可決されれば、ソーシャルメディア企業は、違法コンテンツの削除やユーザーの身元確認などを義務付けられることになる。

(注1)連邦最高裁判所の判事は長官を含む11人で構成されており、全員参加の「大法廷」(Plenário)と、長官を除く10人の判事が2つのグループに分かれて構成される「小法廷」(Turmas)が審理を行う。今回の決定は第1小法廷の判事5人の賛成投票によって承認された。

大法廷とは:裁判所の主要な審議、特に違憲審査訴訟など憲法の本文に従って規範を有効にするかどうかの決定を行うほか、国家的に重要な案件や、小法廷間で解釈が分かれた場合の統一判断などを担当。
小法廷とは:通常の訴訟事件や、特定の問題・人に関する合議的な判断を迅速に行う。大法廷で議論すべき広範な訴訟を除く案件を担当。

(注2)VPN(Virtual Private Network、仮想プライベートネットワーク)とは、インターネット上で、暗号化技術などを用いて、特定のネットワークへの接続を可能にする技術。

(中山貴弘)

(ブラジル)

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