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米東海岸の港湾労使交渉、協議進展せずストに突入する見通し(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月1日 11時0分

国際港湾労働者協会(ILA、注1)は9月30日、米東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者が10月1日からストライキに突入する方針だと、同社のフェイスブックであらためて発表した。米国東海岸の労使交渉を巡り、米国海運連合(USMX、注1)が新たな労働協約の契約期限前の合意に向けた「道筋を阻み」続けていると批判し、ILAはストに突入するとしている。

両者の間で難航している労使交渉は、2024年6月から基本協約交渉を開始する予定だったが、ILA側は、組合員の労働力を使わずに、港湾ターミナルでトラックを処理するために自動化技術が導入されたことが現行の労働契約に違反していると主張し、労使交渉は中断していた。その後、労働協約の締結に向けて協議を行うため、9月4~5日に会合が開かれたが、賃金などの問題で対立し、交渉は中断している(2024年9月9日記事参照)。

ILAによると、ストライキはメーン州からテキサス州までの港湾に影響し、最大4万5,000人の労働者が参加する可能性があるとしている。東海岸の港湾は全米の港湾荷役の約半分近くを取り扱っており、サプライチェーンに重大な影響を及ぼす可能性がある。

バイデン政権は双方に誠意を持って交渉を続けるよう促し、2021年に米通商代表部(USTR)を中心に設立したサプライチェーンに関するタスクフォースが影響を最小限に抑える支援をする準備があると述べている。9月27日にはUSMXをホワイトハウスに呼び、政府高官との会合で交渉の再開を促したほか、同様のメッセージを伝えるために、ILA側とも連絡を取り合っていることを明らかにした。しかし、ジョー・バイデン大統領は「タフト・ハードリー法」(注2)で認められた権限を行使してストライキを強制的に阻止するつもりはないとしている(ブルームバーグ9月29日)。

米調査会社のアンダーソン・エコノミック・グループは、1週間のストライキが発生した場合には、米国経済に約21億ドルの損失をもたらすと試算している。その大半は、生鮮食料品など予定どおりに配達されない商品に関するもので、15億ドルの損失になる。そのほか、船会社や港湾を含む運輸会社は4億ドルの損失を被り、ストを起こした港湾労働者や一時的に解雇される可能性のある労働者は2億ドルの賃金を失う。

米西海岸では2014~2015年の9カ月間にわたる対立により、港湾で業務停滞や生産性の低下をもたらしたが、今回のストが実施された場合、米国の海運拠点での初の大規模な労働争議となる。東海岸の港湾労働者によるストは1977年以来となる。

(注1)USMXは米国東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働の雇用主を、ILAは同労働者を代表する。

(注2)1947年に制定された米国の労使関係法で、連邦政府が仲介して団体交渉を調停する代わりに、交渉に要する80日間は労働者に職場への復帰を強制することができる。

(樫葉さくら)

(米国)

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