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人身取引防止法を改正、違法な残業を強いると刑事罰の対象に(メキシコ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月17日 11時0分

メキシコ政府は6月7日、連邦官報で人身取引関連犯罪防止・制裁・撲滅および被害者保護・救済法(以降、人身取引防止法)」の改正を公布し、翌日に施行した。同内容のうち、進出日系企業の操業に影響を及ぼす可能性があるのは、同法第21条の改正だ。

人身取引防止法は第10条に基づき、「搾取」を目的に人を捕らえ、騙(だま)し、運搬・移送し、抑留し、引き渡し、受け取り、あるいは収容する行為について、10~15年の禁錮に加え、法定価額算出係数(UMA、注1)の1,000~2万倍の罰金を科しているが、これ以外に、「搾取」行為に応じた制裁を科している。本来は人身取引の防止が目的だが、第10条が定める人身取引に直接関与したかどうかにかかわらず、第11~31条が定める「搾取」行為を行った場合は、それぞれが定める罰則の対象になりえる。

第21条は、人身取引関連犯罪とみなされる搾取のうち、「労働搾取」についての罰則を規定する。3~10年の禁錮に加えてUMAの5,000~5万倍の罰金の対象となる「労働搾取」を例示しており、従来は、(I)関連法規が定める保護器具を提供せずに危険で不健康な条件下で働かせること、(II)仕事量とその対価が明らかに釣り合っていないこと、(III)法定最低賃金以下で働かせること、だった。本改正により、(IV)法律が定める基準を超えた労働時間で働かせる場合、が追加された。さらに、先住民居住区やアフリカ系メキシコ人居住地の住民を労働搾取した場合、4~12年の禁錮に加えてUMAの7,000~7万倍の罰金へと罰則が強化された。

1日3時間以上、週9時間以上の残業に留意

憲法第123条および連邦労働法(LFT)第61条は、就労時間として昼間の場合(注2)は1日8時間、週48時間までの労働を認めているが、LFT第66条で1日3時間、週3日(合計9時間)を超えない範囲での残業を認めている。残業時間については、通常賃金の2倍が支払われる。1日3時間、週9時間を超える残業は違法とみなされ、LFT第68条に基づき労働者は使用者の指示に従う義務はないが、同時に1日3時間、週9時間を超えた場合、残業代が通常賃金の3倍になることも規定している。進出企業の中には同条の規定を適用し、原則に照らし合わせれば違法ではありながらも、3倍の賃金を支払うことで労働者を1日3時間、週9時間を超えて残業させていることがある。

今回の人身取引防止法改正により、1日3時間、週9時間を超えた残業を労働者に強いた場合、雇用主は刑事罰の対象になりえると解釈される。労働法に詳しいリトラー・メンデルソン弁護士事務所のエステファニア・ルエダ・メキシコ代表社員は、LFT第68条の規定が曖昧であるため、「法定残業時間を超えただけで刑事罰が適用されることにはならないだろう」としながらも、労働者との間で労働裁判の種になりうるリスクを指摘する(「エクスパンシオン」誌インターネット版6月13日)。

(注1)罰金や社会保険料の計算などに用いる係数で、毎年インフレ率に応じて更新される。2024年時点のUMAは、108.57ペソ(約923円、1ペソ=約8.5円)。

(注2)LFT第60条および第61条に基づき、1日の最長労働時間は、昼間労働時間(午前6時~午後8時)が8時間、夜間労働時間(午後8時~翌午前6時)が7時間、昼夜混合時間帯(夜間が3時間半以内)が7時間30分と定められている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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