ロシア、中央アジア、コーカサス地域の最新情勢についてジェトロ所長がウェビナーで解説(ロシア、中央アジア、コーカサス)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月30日 0時0分
ジェトロは1月22日にロシア、中央アジア、コーカサス地域を管轄する現地事務所長が登壇するオンラインセミナーを開催し、経済・ビジネス環境の現状と2025年の展望について解説した。
ジェトロ・モスクワ事務所の梅津哲也所長は、2024年のロシア経済は好調で3%台後半から4%程度の成長が見込まれているが、平時とは異なり中身に注目する必要があると指摘した。経済の中心である資源産業の落ち込みを、軍需産業や機械が補っている。堅調な消費の影響も大きい。一方、インフレ対策で高い政策金利に起因する設備投資の減少や、民需生産の頭打ちによる供給不足から、経済成長が鈍化する恐れがある。在ロシア日本企業の活動は低迷しており、景況感は若干の回復傾向にあるものの、侵攻開始後3年近くマイナスが続いている。2025年は日本にとりロシアがポテンシャルのある市場であり続けるか否か、ビジネス環境を見極めていく必要があると述べた。
タシケント事務所の一瀬友太所長は、2024年は中央アジアの地政学的注目度が高まり、域内協力が進んだと述べた。エネルギー、グリーン経済、インフラ、IT、AI(人工知能)が各国共通の主要トピックで、物流やグリーンエネルギー関連で地域横断的プロジェクトが動き始めている。ウズベキスタンでは、経済改革後の投資増が原動力となり6%前後の高いGDP成長率を維持している。政府が推進するグリーン政策により、太陽光・風力発電所建設への中東と中国からの投資や中国ブランドEV(電気自動車)の国内生産など、大型プロジェクトが進められている。また、ITやサービス関連で日系中小企業の進出がみられるという。
コーカサス3カ国のうち、アゼルバイジャン、ジョージアについては佐野充明イスタンブール事務所長が、アルメニアについては梅津所長が説明した。アゼルバイジャンは、物流では中央輸送路(注1)の要衝として中国から、南北輸送路(注2)の要衝としてロシアから重視されている。エネルギー分野では、東欧や中央アジアの国々と協力してグリーンエネルギーを欧州に輸出するプロジェクト(注3)が始動し、COP29(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)の議長国としても注目された。ジョージアはここ数年、中国のアナクリア深海港事業への参画、韓国との経済連携協定の交渉妥結、日本でのジョージア・イノベーション・テクノロジー庁(GITA)のセミナー開催(2023年10月23日記事参照)など、アジアとの協力を進めている。最近は、内政の混乱とEU統合交渉凍結が国際的に注目されている。アルメニアは、ハイテク分野のポテンシャルが高い。2024年に、日本で初のTUMOセンター(注4)の開設が決定された。ナゴルノカラバフ紛争への対応に関連して、ロシア離れと欧米接近が進んでいる。
(注1)正式名称は「カスピ海横断国際輸送ルート(TITR)」。トルコ、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンを経由して欧州と中国をつなぐ国際複合輸送路で、2022年2月以降、ロシアを迂回する物流ルートとして開発が進んでいる。
(注2)「南北国際輸送路(INSTC)」は、カスピ海周辺のアゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンを経由して、ロシアとイラン、インドをつなぐ国際複合輸送路。
(注3)黒海・カスピ海のケーブル経由でグリーンエネルギーを欧州向けに輸出するプロジェクトで、アゼルバイジャンのほか、ジョージア、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリアが参加を表明している「黒海エネルギー・プロジェクト」と、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、カザフスタンがCOP29期間中に署名した「グリーンエネルギーの開発・移転分野の戦略的パートナーシップに関する3者協定」がある。
(注4)TUMO(ツーモ)は、アルメニア発祥の子供向けデジタル教育プログラムで、ヨーロッパを中心に7カ国10都市に拠点がある。日本には、2025年夏に群馬県に拠点が開設される予定。
(小林圭子)
(ロシア、中央アジア、コーカサス)
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