トランプ米大統領、半導体、医薬品、鉄鋼などへの新たな関税賦課表明も、詳細は不明(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月29日 10時55分
米国のドナルド・トランプ大統領は1月27日、半導体、医薬品、鉄鋼などに対して、新たに関税を課す計画があると述べた。ただし、これまでの選挙公約や就任初日に出された大統領覚書に基づく調査指令などとの関係性は不透明で、詳細は明らかになっていない。
トランプ氏は、共和党下院議員に向けた演説の中で、半導体、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅、そして軍事に必要な製品に対して、近い将来、関税を課す計画があると明らかにした。「もし税金や関税を支払いたくないのであれば、米国内に工場を建設しなければならない」とも述べ、関税が工場誘致のインセンティブになることから、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)のような助成金は不要だとも述べた(注1)。一方、マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)は同日、「国全体や産業全体に、一律関税が課されることはないだろう」と述べた(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」1月27日)。
トランプ氏が新たな関税の対象として挙げた品目は、中国からの輸入に対しては、1974年通商法301条に基づき追加関税が課されている。その中でも、いわゆる戦略品目に分類される半導体、鉄鋼、アルミニウムは、バイデン前政権下の2024年9月に、追加関税率の引き上げが発表された(2024年9月17日記事参照)。さらに、鉄鋼とアルミニウム製品に対しては、1962年通商拡大法232条に基づき、原則として全ての国からの輸入に対して10~25%の追加関税が課されている(注2)。トランプ氏が大統領就任初日に発表した「米国第一の通商政策」では、これら対中追加関税率の見直しや(2025年1月22日記事参照)、鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税が安全保障上の脅威へ対抗するのに十分か検証するよう指示している(2025年1月22日記事参照)。現時点では、これら調査指令と、今回明かされた関税計画との関係は不透明だ。
また、全世界からの輸入に一律10~20%の関税を課すベースライン関税は、トランプ氏が公約の1つに掲げていた(注3)。「米国第一の通商政策」では、「貿易赤字是正のため、グローバルな追加関税など、適切な措置を勧告する」と指示し(2025年1月22日記事参照)、ベースライン関税の発動を示唆していた。だが、今回のジョンソン氏の発言は、こうした方針に反する内容となっている。
トランプ氏は就任前から、メキシコとカナダに対して就任初日に25%の追加関税を課す、中国に対しては現行の追加関税率に10%上乗せする、などと述べてきた(2024年11月26日記事参照)。しかし、就任初日に出された「米国第一の通商政策」は、主に調査を指示する内容で、新たな追加関税は課されておらず、ベースライン関税の発動についても異なる複数の見方がある。新たな関税措置の導入については、今後の動向を慎重に見定める必要がある。
(注1)バイデン前政権は、CHIPSプラス法に基づく助成発表を政権交代前に急いでいた(2025年1月20日記事、2025年1月27日記事参照)。なお、ジョンソン氏は、CHIPSプラス法の廃止を支持すると述べていたが、半導体関連投資の恩恵を受ける州選出の共和党議員から批判を受け、発言を撤回し、CHIPSプラス法の改善・効率化を支持すると、態度を軟化せていた。
(注2)アルミ製品に対しては10%、鉄鋼製品に対しては25%の追加関税が課されている。ただし、日本やEUなど特定の国・地域からの輸入に対しては、関税割り当てなどの措置がとられている。
(注3)トランプ氏の選挙期間中の公約については2024年8月9日付地域・分析レポート、関税政策については、2024年12月10日付地域・分析レポート、2025年1月15日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国)
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